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連載・特集

安全審査申請 島根2号機 福島と同型 高いハードル

焦点のベント厳しい見方も

 中国電力が島根原子力発電所2号機(松江市鹿島町、出力82万キロワット)の安全審査を原子力規制委員会に申請した25日。規制委の田中俊一委員長は、事故時に放射性物質の放出を抑えるフィルター付き排気(ベント)設備を「一番大きな審査のポイントになる」と言い切った。

4000ページの申請書

 原発の新しい規制基準が施行された7月から9月までに5電力会社が計14基を相次ぎ申請する中、第1陣から5カ月遅れとなった中電。申請に出向いた清水希茂副社長は「先行する審査内容をつぶさに確認し、指摘事項を申請書に反映した。審査に当然耐えられる」と述べた。

 清水副社長が持参した約4千ページの申請書。事故対応の指令拠点として建設中の免震重要棟の耐震性能を説明し、9月に完成した海抜15メートルの防波壁が想定する津波の最高水位9・5メートルを上回ると紹介する。ベント設備は、原子炉格納容器にたまる蒸気を逃がす際にセシウムの量を規制値の5万分の1に減らすと明記した。

 焦点となるベント設備は、事故を起こした福島第1原発や島根原発と同じ沸騰水型原子炉に即時設置が課された。11月にあった規制委の会合で「さまざまな技術の問題がある。そう簡単には進むとは思えない」との意見が出るなど、厳しい審査が見込まれる。

 実際、東京電力が9月に申請した柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)は規制委から運用の難しさを指摘され、審査が進んでいない。「ベントが本当に機能するのか。相当な議論を重ねる必要がある」と田中委員長。中電は昼夜を問わない工事で完成を急ぐが、審査の終了は全く見通せないのが実情だ。

黒字回復の策

 中電は「スムーズな審査をお願いしたい」(清水副社長)と早期稼働を目指す。原発停止で燃料費が年1200億円増え、赤字に転落しているからだ。電気料金がもともと高水準で他社のような本格値上げが難しく、原発の再稼働だけが黒字回復の抜本策と繰り返す。

 苅田知英社長は、島根県と松江市から申請の了解を得た24日、「まずは安全をはっきりと審査してもらい、地元に説明していく」と語った。規制委による審査内容を丁寧に地元へ伝え、再稼働への理解を求める考えだ。

 原発に反対する広島大の滝史郎名誉教授は「規制だって万全ではなく、依然として住民の避難が必要になる事故の可能性はゼロではない」と指摘。「震災前にあった原発の安全神話に中電が回帰している」との懸念を強めている。(山瀬隆弘、山本和明、樋口浩二)

フィルター付き排気(ベント)設備
 原子炉が冷却機能を失い格納容器の圧力が高まった際、蒸気を逃がすことで水素爆発を防ぐ。フィルターを通すことで放射性物質の放出量を約千分の1に抑える。島根2号機や事故を起こした福島第1など格納容器の小さな沸騰水型と呼ばれる原発は、新規制基準で設置が稼働の条件とされた。

(2013年12月28日朝刊掲載)

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