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2013年広島県内重大ニュース 平和行政

平和行政

継承に難題 人形論争

 焦げた髪、破れた服、やけどの皮膚が両腕から垂れ下がる。逃げ惑う被爆者の姿を再現したプラスチック製人形。広島市が3月、原爆資料館(中区)から2016年3月ごろに撤去する方針を市議会に示して以降、市民の間で反対の署名活動が起きた。

 市は資料館の耐震改修に合わせ、18年度の全面リニューアル時には展示内容を被爆者の遺品など「実物」重視に切り替えるとした。

 撤去に反対する市民は「若い世代が原爆被害を想像する上で必要」と訴える。被爆者が高齢化する中、体験をどう継承していくか―。「人形論争」は難しい課題をあらためて浮かび上がらせた。

 8月、松井一実市長が会長を務める平和首長会議が8年ぶりに広島で開かれ、20年までの核兵器廃絶に向けたヒロシマアピールを採択した。5800以上の加盟都市を束ね、行動する指導力がこれまで以上に必要だ。近づく被爆70年。ヒロシマの使命を果たす覚悟が問われる。

 「国際平和拠点ひろしま構想」を掲げる県は、各国の核軍縮・不拡散の取り組みを採点した「ひろしまレポート」を発表。核兵器保有国を含むアジア太平洋地域5カ国の研究者や外相経験者を集めた円卓会議も初開催した。(下久保聖司)

(2013年12月30日朝刊掲載)

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