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連載・特集

被爆実態を中・仏語で発信 平和MCサイト今春リニューアル

 日英2カ国語で核兵器廃絶を訴えている、中国新聞社のヒロシマ平和メディアセンター(平和MC)のウェブサイトが今春、リニューアルされる。広島大の協力を得て中国語とフランス語を加え、平和学習のため国内外から広島を訪れる人向けのコーナーを拡充。スマートフォンやタブレット端末への対応も図る。世界160カ国・地域からアクセスのある原爆・平和関連の専用ウェブサイトは、被爆地広島からの発信強化へ装いを一新する。(宮崎智三)

 12月中旬、広島大東広島キャンパス(東広島市)の文学研究科、陳翀准教授(39)の研究室に多くの留学生が姿を見せた。原爆被害や、平和記念公園にあるモニュメントなどの記事を中国語に訳すための打ち合わせだ。

 あの日、閃光(せんこう)を浴びた人々は、街は、どうなったのか。その後、どのように復興を遂げ、今、広島はどうなっているのか―。

 そうした記事を中国の人たちに伝えるため作業を進めていく。まず留学生が中国語に翻訳。陳准教授が入念にチェックし、文体などを含めて監修する。

 フランス語への翻訳も留学生らを中心に進める。チェック役の重責は、文学研究科のジャンガブリエル・サントニ教授(62)と、総合科学研究科のクロード・レヴィアルヴァレス教授(61)が担う。

 中国、フランスとも核兵器保有国である。しかし、原爆の被害がどれほどか、あまり知られていないのが実情だ。それだけに、両国で被爆の実態を知ってもらう意義は大きい。

 中国語とフランス語を加え、多言語発信の厚みを増す被爆地広島。核兵器のない平和な世界を目指して、さらに歩み続ける。

核兵器廃絶 理念と共鳴 広島大学長 浅原利正

 ヒロシマ平和メディアセンターは、原爆・平和報道の蓄積や経験を基に、核兵器廃絶に向けた情報発信の拠点となっています。

 広島大は、被爆地にある国立大学としての使命を認識し、基本理念5原則のトップに「平和を希求する精神」を掲げています。文部科学省の本年度「地(知)の拠点整備事業」にも採択され、広島県、広島市、東広島市などの自治体と連携して、広島地域の共通課題である「ひろしまの平和発信」などの課題を学生たちが学び、考えています。

 今回、サイト多言語化への支援依頼を受け、意義に共感して快諾しました。

 翻訳には教員だけでなく、留学生も協力します。次代を担う留学生たちが翻訳作業への参画を通して、ヒロシマについて学び、考えるという経験は、核兵器廃絶や世界平和実現につながると信じています。

 これからも、地域に根差した大学と、「平和を希求する精神」を醸成する教育を目指します。

歩いて知って平和公園 訪問者向けコーナー充実

 映画館や飲食店、旅館が軒を並べ、市民でにぎわっていた広島市の中島本町周辺。市内有数の繁華街は、たった1発の原爆で跡形もなく消え去った。

 平和記念公園(中区)となった今、国内外から多くの人が訪れる。だからこそ、知ってもらいたい。公園のかつての姿を。原爆に奪われたにぎわいを。

 そして、できれば、公園内をくまなく歩いてもらいたい。

 見上げてほしい。静かに核兵器を告発する原爆ドームを。耳を澄ませてほしい。人類の未来に向け、鳴り続く警鐘を。

 原爆の子の像の前で感じてほしい。世界中から寄せられる折り鶴に込められた思いを。

 原爆資料館の展示品に目を凝らしてほしい。国立広島原爆死没者追悼平和祈念館の手記から被爆者の苦悩と平和への願いに思いをはせてほしい。

 被爆地広島の顔となった平和記念公園。さまざまなモニュメントを巡って、その由来を知ってほしい。そんな願いを込めて、公園の「今」を伝えるコーナーを拡充する。

(2014年1月3日朝刊掲載)

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