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グローバル人材を求めて JICA中国セネガル調査から 海外責任者の道 

 「現職参加した青年海外協力隊員が現地での活動に魅せられ、退職した例はないですか」。国際協力機構中国国際センター(JICA中国)=東広島市=の調査団に加わりセネガルを視察していた三戸日出一さん(38)が、同行していたJICA職員に尋ねた。

 2月4日、地方都市のルーガでのことだ。視察2日目で、それまで隊員4人の活動現場を見学していた。

 自動車部品製造などのシグマ(呉市)の人事採用担当である三戸さんは、隊員のはつらつとした姿に目を見張り、素朴な疑問を口にした。職員の答えは「ないとは断言できないが、そうしないよう指導している」だった。

 現職参加とは、企業などを休職した上で隊員として現地に赴く制度。任期が終われば復職となる。「人材育成にこの制度を活用できないか」と海外展開をにらむ企業側は考える。だが不安もある。「派遣した社員が新たな道が見つかった、退職したいということになれば痛い」

 現職参加には別のハードルもある。社員を参加させるとして、長期派遣は企業の負担が大きい。隊員の任期は原則2年だ。

 視察最終日の7日、訪問団は首都ダカールのJICAセネガル事務所で、加藤隆一所長(50)と意見交換した。その席で長期派遣に関する企業側の懸念を伝え、期間をもっと柔軟に設定できないかと要望した。

 加藤所長は1カ月~10カ月程度の短期派遣もあると説明。その上で「社会のニーズに合ったプログラムを考えたい」とも話した。

 一方のJICA側。任務を終えた隊員を企業に雇用してほしいと望む。調査団長を務めた広島銀行国際営業部の若林伸治部長(51)は「隊員にどのような人材がいるのか知られていない」と指摘した。JICAからの情報発信や企業へのアタックも必要ではないかとの見方だ。

 広島銀行も、海外勤務に適した人材はいないか企業の相談を受けることもあるという。「当行も周知に協力していきたい」とする。

 調査団のメンバーの一人で、金属熱処理加工業のナガト(広島市南区)の内田弘之社長(54)は「現地工場の運営者になるには技術を知ってもらう必要がある。ある程度現場の体験も必要だ」と力を込めた。隊員を採用したとして、すぐに海外で働くことにはなりにくいし、ずっと現地勤務できるとは限らない。

 隊員の希望と業務内容のマッチングに加え、企業の事情に対する隊員側の理解も求められるという。(柳本真宏)

(2014年3月15日朝刊掲載)

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