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連載・特集

回顧2013 <1> 島根原発

安全審査 申請に現実味

 島根県議会定例会最終日の13日、本会議場。中国電力が島根原子力発電所2号機(松江市鹿島町)の再稼働に向け県に事前了解を求めた安全審査の申請について、議会は賛成多数で容認を決めた。直後に溝口善兵衛知事も容認を正式に表明。中電が目指す原子力規制委員会への年内の申請が一段と現実味を増した。

中電の準備進む

 中電による再稼働の動きが表面化したのは9月末だった。これに対し、原発30キロ圏の鳥取県、出雲、雲南、安来、米子、境港市の1県5市は稼働への発言権を要求した。「事故のリスクは同じ」(出雲市の長岡秀人市長)と原発が立地する島根県と松江市並みの権限を求めたが、中電は保留。代わりに島根県と、稼働を判断する際に県が1県5市の意見を参考にするとした覚書を結んだ。2号機の安全審査申請でも、近く県に全ての意見が出そろう。

 一連の再稼働手続きの契機となったのが、7月に規制委が施行した原発の新規制基準だ。福島第1原発事故を受け、津波、過酷事故対策を強化した内容で中電はこれに基づき2、3号機の安全審査の申請準備を進めた。

 中電は新基準に沿った工事を既に進めていたため、完成や着工が相次いだ。海抜15メートルの防波壁は9月に完成。事故時に放射性物質を薄めて排出する2、3号機そばのフィルター付きベント設備は5月に着工した。ベント設備も含め規制委が稼働条件とする設備は来年9月までに完成する。

住民避難に課題

 一方、県は福島の事故を教訓にした原子力防災の検証を重ねた。1、11月には原発30キロ圏の鳥取県、両県6市などと住民の避難訓練を実施。延べ1613人が30キロ圏外への避難を体験した。ただ11月には、30キロ圏約39万6千人の避難に必要なバスが約5割不足するとの試算も判明。安全な住民避難への課題は解消されていない。

 事故への不安などから、一部の住民は脱原発の動きを強めた。4月には島根、鳥取県などの住民428人でつくる原告団が3号機の運転差し止め訴訟を松江地裁に提訴。10月には市民団体が脱原発条例の制定を県に求める直接請求手続きに着手し、署名活動を始めた。規制委による安全審査の開始など2号機の再稼働手続きが進みそうな来年は、地元を二分する激しい議論も予想される。(樋口浩二)

(2013年12月19日朝刊掲載)

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