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連載・特集

ブンカの強豪 美術 基町高(広島市) 誠之館高(福山市)

同志と鍛錬 色づく個性

 美術部は、文化系の部活動では筆頭格にポピュラーだろう。誰もが既に義務教育の中で、クレヨン、粘土、水彩などによる創作に親しんでいる。進学後も部活動で力を伸ばす生徒の裾野は広い。

 一方で美術は、基本的に個人プレーだ。学校単位で「強豪」「伝統校」といった言い方をしにくい分野ともいえる。

 広島市中区の基町高は1999年、普通科の中に「創造表現コース」を設け、美術を重点的に学べる環境を学校の特色として打ち出した。新校舎の建設に合わせ、専用の設備も一気に充実させた。

 定員は各学年1学級40人。ほぼ全員が美術部に所属する。普通コースからも希望者を受け入れるため、140人前後の大所帯となる。

 美術教員は現在、教諭3人に加えて非常勤講師が6人、専ら部活動を担当する嘱託講師が3人。橋本一貫教諭(54)は「創造表現コースでも英語や数学など学科はしっかりやるので、美術のこま数はそれほど多いわけではない。部活動は実技指導の柱になる」と言う。多くの生徒が、美術大への進学を見据えて集う「ハードな部活」だ。

 3月下旬の放課後、美術教室が並ぶ校舎西棟を訪ねると、2年生部員が鉛筆画に挑んでいた。「平和」をテーマにした伝統の課題。鍛えたデッサン力の見せどころだ。

 当宮楽捺(らな)さん(17)は、平和に通じる優しさや繊細さを表そうと、自画像の周囲に花弁やガラス片を描き込んだ。「同じ目標を持つ仲間と、集中して創作できるのがいい」と話す。

 基本の技量をつけることを重視し、コンクール出品は控えめにしているが、昨年度、上川英紀教諭(41)が「たまには腕試しを」と促してみた。21人が応募した「高校生 絵のまち尾道四季展」では、トップの尾道賞に当時2年の神垣優香さん(17)、竹重美里さん(17)の2人が入った。上位10点に贈られる賞で、副賞はフランス研修旅行。439点の中から選ばれ、高い実力を見せた。

 橋本教諭は「自分を高め、長い目で役立つ力を付けてほしい」と説く。コース創設から15年、「伝統」をつくりつつある。

 幕末の藩校から数え、創立159年の歴史を誇る福山市の誠之館高は近年、美術部員のコンクールでの活躍が目立つ。広島県高校総合体育大会ポスターのデザインで2013、14年度と連続で特選(1席)になり、採用された。「ひろしま教育の日」ポスターでも12、13年度と最優秀賞を取るなど、特にデザイン系で強さを見せる。

 14年度高校総体ポスターの特選は、現在3年の藤井涼さん(17)が描いた。人体をモチーフに、大胆な抽象化が光る。「試してみたいと思った表現を、思い切ってやれる雰囲気がある部」と言う。

 部員は例年、各学年に数人から十数人。美大進学を目指す生徒ばかりではない。顧問の長谷川雅敏教諭(57)は「教師の『型』にはめて、学校の『色』が出ることのないよう気をつけている」と話す。

 地域のサポートも心強い。校舎から徒歩15分ほどのふくやま美術館は、高校生以下は入場無料。気軽に名品に触れられる場になっている。同館で毎春開く「誠之館同窓会作品展」は今年から、現役部員の作品も展示。発表、交流の場が増える。

 同窓会幹事長の会社役員島田斉(ひとし)さん(58)は「日本画の故塩出英雄さんをはじめ、卒業生には名だたる美術家もいる。新しい才能が埋もれることのないよう、少しでも役立てればうれしい」と話す。(道面雅量)

 <メモ>特別コースなどを設けて美術教育に力を入れている高校に、中国地方では基町のほか熊野(広島)、総社南、明誠学院、倉敷(以上岡山)、出雲北陵(島根)などがあり、部活動も活発だ。新庄(広島)は長年、美術部顧問を務めた画家小田丕昭(おだ・ひしょう、1911~2003年)の指導で俊英が巣立ったことで知られ、卒業生が各地で次世代を育てている。

(2014年4月5日朝刊掲載)

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