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被爆樹木2世 異国に根付け シンガポール 学生が世話 反核精神養う

 シンガポール国立大(シンガポール)の構内に被爆クスノキ2世の苗木が植樹された。被爆樹木の種や苗木を広めている広島の団体、グリーン・レガシー・ヒロシマ(GLH)から種を譲り受け、学生が自ら発芽、生育させた。現地で植樹式があり、関係者らは平和と交流のシンボルが根付くことを願った。(金崎由美)

 GLHの活動に参加する上真一・広島大大学院教授らが出席。学生たちが見守る中、葉が生い茂った苗木の根元に土をかけた。クスノキは高温多湿な気候に順応しやすく、日本よりも早く成長しそうだという。

 シンガポール国立大関係者がGLHのナスリーン・アジミ共同代表と旧知だったのがきっかけとなった。2012年6月に30粒が託され、数個の発芽に成功した。シンガポール植物園に鉢の管理や栽培指導で協力を仰ぎ、8人の学生ボランティアが丹念に世話をしてきた。

 2年生のサラ・ウィーさん(22)は同年12月、日本語学習のため広島市内でホームステイ。その際、爆心地から約1・1キロ離れた広島城の堀端に立つ母木を訪ねた。樹木医と会って栽培のノウハウも学んだ。その後、専攻を心理学から生命科学に変えたほど、被爆樹木の生命力に感銘を受けたという。

 「広島からいただいた種。重圧も感じながら試行錯誤を続けた。活動を通じて核兵器に反対する気持ちと、日本への関心をより強めている」と喜ぶ。

 学生をまとめる同大のマーガレット・タン研究員(43)は「旧日本軍に占領された国であり、原爆投下に対する考えも一様でない」としながら、「核が人間にもたらした苦しみを知る機会になる。樹木の世話を通して平和と交流、環境保全の大切さも学んでいる」と意義を語る。苗木を増やす活動は今後も続ける。

 GLHは11年7月、国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所と、広島のNPO法人ANT―Hiroshimaが設立。これまでに被爆樹木から取った種や苗木を約20カ国の学校や団体に送っている。

(2014年5月12日朝刊掲載)

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