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空襲前の岩国 地図で復元へ 「語り継ぐ会」情報提供呼び掛け

 終戦前日の1945年8月14日、空襲で壊滅的な被害を受けた岩国市のJR岩国駅前の当時の町並みを地図で復元する取り組みを、戦争体験者たちでつくる「岩国空襲を語り継ぐ会」が始めた。当時の住民が記憶を頼りに手描きした地図を基に、映画館や旅館などが並び、にぎわった様子を地図上によみがえらせる。

 岩国市史などによると、岩国駅周辺は、14日午前11時55分から約25分間にわたって米軍による空襲を受け、517人が死亡、30人が行方不明となったとされる。語り継ぐ会は、当時の市職員の証言から死者は千人以上いたとみている。

 ことし4月下旬、当時11歳で、駅前に住んでいた主婦村中(旧姓末広)貴代さん(80)=同市麻里布町=が、空襲前の駅周辺を手描きした地図を語り継ぐ会に寄せた。村中さんは防空壕(ごう)に避難していたため難を逃れたが、自宅は跡形もなくなったという。

 地図には岩国駅が戦前、戦中の一時期に使われた「麻里布駅」の名称で表記され、伯父が営んでいた旅館「錦水軒」のほか、パン工場、うどん店、映画館などが軒を連ねる。村中さんは「元気なうちに描いておきたかった。当時を知る人が健在なうちに、地図を完成させてほしい」と願う。

 空襲前の岩国駅前の地図復元を構想していた語り継ぐ会は、寄せられた地図の空白を埋めていくための情報提供を呼び掛ける。戦後70年となる来年の完成を目指す。森脇政保事務局長(81)=大竹市小方=は「復興した街や亡くなった人に思いをはせ、『戦争はいけない』と思うきっかけにしてほしい」と話す。語り継ぐ会Tel0827(24)8210。(増田咲子)

(2014年5月22日朝刊掲載)

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