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連載・特集

海自呉地方隊60年 第4部 支える部隊 <2> 呉造修補給所貯油所 国内唯一 陸海空に補給

 海上自衛隊最大級の燃料補給施設、貯油所は呉市吉浦町にある。山と海に囲まれた約32万平方メートルの敷地に陸路でタンクローリーやトラックが出入りし、桟橋には艦船が着く。国内で唯一、陸海空3自衛隊に補給する。補給・支援基地の象徴的存在である。

 山を掘ったトンネルの中などに大小約70基のタンクが並ぶ。地下には直径約85メートル、高さ約8・3メートル、約4万キロリットルの円柱型大型タンク2基が埋まる。旧海軍の施設を引き継いだ。

扱う燃料9種類

 1961年に3自衛隊の幕僚長が協定を交わし、中四国の陸自、沖縄を除く浜松以西の空自にも燃料を供給する。扱う燃料は9種類。艦船、航空機、戦車など用途も幅広い。

 防衛省は2006年から、災害派遣やミサイル対応、国連平和維持活動(PKO)などの任務に当たり、3自衛隊を一体的に運用する態勢を敷いた。防衛大臣の指揮や命令は統合幕僚長を通じて一元的に執行する。

 一元化態勢を整える45年も前から、3自衛隊が一体的に運用、ノウハウを蓄積してきた貯油所。ドラム缶一つ取っても陸海空それぞれ仕様が異なるが、防衛省技官を中心に手際よく洗浄、燃料を詰めていく。警備には18匹の警備犬を置き、4人の訓練士が担当する。生きた人間のにおいを嗅ぎ分け、不審者の侵入を防ぐ。

 昨年12月、政府は今後10年程度の防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」を策定した。新大綱は、沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との問題や離島防衛を重視する。

防衛省 高い期待

 軍事評論家の前田哲男さん(75)は「西日本にある呉と佐世保の重要性が増す」と分析する。外洋に面した佐世保に対して、内海に位置する基地、呉。元呉補給所長の中村博太郎さん(78)は「前線基地には向かないが、後方部隊としての存在感は大きい。貯油所と呉弾薬整備補給所(江田島市)は防衛省の期待も高い」と指摘する。

 自衛隊を取り巻く情勢は変わり、部隊の活動が活発化するほど貯油の役割は大きくなっていく。布施壮一所長(50)=2佐=は「たとえ扱う燃料が300トンから3千トンになろうと業務は変わらない。安全にオーダーに従い確実に」と淡々と語る。(広重久美子)

(2014年7月30日朝刊掲載)

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