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連載・特集

海自呉地方隊60年 第4部 支える部隊 <5> 呉警備隊呉水中処分隊 爆発物処理の危険背負う

 海上自衛隊呉基地の「Bバース」から西へ約3キロ。呉湾に浮かぶ大うるめ島の沖が、呉警備隊呉水中処分隊の潜水訓練の場だ。

 全国5地方隊にある水中処分隊は、今も日本の海域で見つかる不発弾など爆発性危険物の処分に当たる。海自隊第1術科学校(江田島市)で、計33週の訓練を積んだEODと呼ばれる高練度の隊員たち。ただでさえ危険と隣り合わせの潜水に加え、爆発物処理という危険を背負う。

平均35歳の20人

 呉水中処分隊は平均年齢35歳の20人。2013年度末までの46年間、瀬戸内海などの警備区内で計261トンの爆発物を処理した。年平均10回出動する。昨年9月には廿日市市沖の海底で爆雷を回収した。

 キャリア21年の新井真志先任海曹(43)=1曹=は「貝が付着した不発弾はどこが信管かも分からない。的確な判断力が必要」と説く。

技術教育の中心

 隊は呉基地に係留する艦船部隊の潜水隊員の指導役でもある。1991年、湾岸戦争後のペルシャ湾への機雷掃海部隊を指揮した落合畯(たおさ)さん(75)は「呉基地には艦船が多い。潜水技術教育の中心として、水中処分隊の存在は大きい」とする。

 政府は7月、集団的自衛権の行使容認を閣議決定。行使の事例として「国際的な機雷掃海活動への参加」を掲げた。考えられる場所としてペルシャ湾・ホルムズ海峡が挙がっている。

 ただ戦時下の掃海作業は海自隊にとっても未知の領域。機雷を除去、無力化する作業も戦闘行為とみなされ、攻撃の対象になる可能性もある。掃海のための装備も戦時を想定していない。

 山口大副学長の纐纈(こうけつ)厚さん(63)=現代政治軍事論=は「年末改定の日米防衛協力指針の中でも、掃海任務の位置づけが重要になる。米に代わって前面に出る役割が求められることも想定されるため、スキルをさらに高めていく必要に迫られる」と分析する。米軍の作戦を補完する役割を負うことになるのではないかという懸念だ。

 谷浩呉水中処分隊隊長(52)=3佐=は「いかなる任務であっても対応できるように訓練に励むだけ」。安全保障政策の転換期を迎える中、隊員は目前の任務に黙々と向き合う。(小島正和)=第4部おわり

(2014年8月2日朝刊掲載)

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