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連載・特集

NIE 将来像熱く 広島県推進協20周年記念フォーラム

 NIE(教育に新聞を)の取り組みを支えてきた広島県NIE推進協議会の設立20周年記念フォーラムが、広島市中区の中国新聞ビルであった。記念講演やシンポジウムを通じ、生徒や教諭、保護者たちが、NIEの現状や将来像について意見を交わした。(加茂孝之)

シンポ発言要旨

5紙読み比べ/記事執筆難しい 自分を変えた/正確な情報期待

6年間実践/市民の声反映/若い読者を意識

 NIEを経験した中高生や大学生、教諭たちが「新聞で育った私たち」をテーマに、新聞との関わりについて報告した。発表要旨は次の通り。

 広島県立広島中2年 山本英恵さん(14)
 朝、玄関へ新聞を取りに行くのが日課。学校では5紙を読み比べ、多様な視点に触れている。新聞は世界地図であり、タイムマシン。各国の歴史を学び、未来を想像できる。米国のように、経済やスポーツなど分野別の新聞があれば家族で一緒に読めてうれしい。

 広島大付属高1年 中原維新さん(15)
 約1年前に中国新聞ジュニアライターになり、取材した内容を記事にまとめる難しさを知った。いまは携帯電話でニュース記事を読めるけれど、文中の言葉をクリックしたら、より詳細な情報が見られるような仕組みができたら、もっと便利だと思う。

 長崎大教育学部2年 川崎有希さん(19)=広島・油木高出身
 先生や友人の勧めもあって核兵器の廃絶を世界に訴える「高校生平和大使」を務めることになった。世界情勢や平和に関する記事を中心に、新聞を毎日読み、知識を蓄えている。教諭になる夢を持ちながら、自分を変えてくれた新聞を今後も読み続けたい。

 保護者代表 会社員桂木公枝さん(42)=広島市中区
 子ども4人が2011年に「みんなの新聞コンクール」で最優秀賞を受け、その後は「記事を読んだ人がどう思うか」と想像しながら新聞を読んでいる。ネットで情報が氾濫する中、正確な情報を求める声は強まると思う。新聞の役割に期待している。

 呉市立昭和西小教諭 米井公介さん(43)
 転勤で別の学校に移っても、学年やクラスの雰囲気を考えながら約6年間実践を重ねてきた。新聞記事は、記者がじっくりと構成を考えた上で書かれている。携帯文化に親しんだ子どもたちの内面を育てるとともに、私自身もさらに成長していきたい。

 毎日新聞広島支局 戸田栄支局長
 新聞には市民の声を社会に反映させる役割もある。「無保険の子」問題を継続報道した結果、法改正につながった。情報を寄せてくれた人がいたから実現した。新聞をもっと活用してほしいし、NIE教材として使われることも意識した新聞づくりを心掛けたい。

 中国新聞社報道部 加茂孝之
 大学の話題を掘るキャンパスリポーターへの助言や小中学校への出前授業を通じ、若い世代と交流する機会が多い。真剣な表情を頼もしく思うと同時に、鋭い質問や感性に驚かされることも。若い読者に支持される記事を一本でも多く書くことを意識したい。

記念講演要旨

県NIE推進協議会長 小原友行さん

子どもの成長が成果

 この20年の最も大きな成果は子どもの成長。原爆・平和に関する記事を集め続けた女子生徒は「高校生平和大使」になり、核兵器廃絶の願いを世界に発信する役割を担った。ある児童は、大好きな広島東洋カープに関する記事の切り抜きを続けたことで表現力が豊かになった。

 「みんなの新聞コンクール」(中国新聞社など主催)で成長する児童、生徒は多い。毎年応募し、複数回の受賞経験がある子どももいる。新聞記者さながらに、深い社会問題を取り上げた力作もある。

 子どもが特産品づくりに取り組む姿が紹介されるような「新聞に載るNIE」が今後増えるのを期待する。観光振興や地域貢献に携わる子どもたちが紙面で紹介されるのは意義深い。

(2014年9月1日朝刊掲載)

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