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海自呉地方隊60年 第5部 基地と地域 <1> 経済効果 呉市や街に332億円

 海上自衛隊呉地方隊創設から60年、呉基地と地元の呉市は寄り添うように歩んできた。市が受け取る基地関連の交付金はインフラ整備などの財源になり、隊員の消費は経済を潤す。元隊員がまちづくりを引っ張っている地区も少なくない。人、経済、モノ…。基地と地域の密接な関わりをみていく。(小島正和)

 呉港に近い海自隊呉教育隊(幸町)。1周千メートルのグラウンドも備える約9万7千平方メートルの敷地はまさに一等地にある。平地の少ない呉市ではなおさらだ。

9割 中心部近く

 「民間なら何に活用できるか」。こんな話がささやかれる。市内の海自隊施設は17カ所あり、総面積は84ヘクタール。市域の0・23%だが、約9割が市中心部に近い沿岸地域に集まる。

 国は自衛隊や米軍の施設を抱える市町村に補償的な意味合いを持つ財政支援措置を取っている。基地交付金▽調整交付金▽特定防衛施設周辺整備調整交付金▽民生安定施設の助成―など。2013年度、呉市には計約2億8千万円が入った。

 「使い勝手が良く、まちづくりの貴重な財源。基地の恩恵は大きい」。自衛隊との共存共栄の姿勢をとる小村和年市長は強調する。

 例えば防衛省の特定防衛施設周辺整備調整交付金。住民の安全や福祉向上のため、衛生や教育、スポーツといった幅広い事業に充てることができる。市は13年度、1億3600万円の交付金をごみ収集車購入、公園への健康遊具整備、教職員の人件費などに使った。

 総務省の基地交付金は、市町村が防衛施設から本来得るはずの固定資産税の代替に位置付けられる。これも欠かせぬ財源で、市には毎年1億円程度入る。

 ただ交付対象の施設は17施設のうち呉教育隊、呉造修補給所貯油所(吉浦町)など4施設だけ。基地を抱える神奈川県の横須賀市議会などとともに国への要望を続ける呉市議会の神田隆彦議長は「基地により開発が抑えられている側面もある。交付対象を全施設に拡大すべきだ」と求める。

「共存は今後も」

 基地がもたらす恩恵は各種交付金だけではない。13年度の呉地方総監部の予算は約1171億円で、市の一般会計当初予算980億円をしのぐ。そこから糧食費や艦艇の修理費といった金が地元企業に落ちる。隊員が払う市民税は約12億5千万円で、市の市民税収の1割を占める。総監部は呉の街への経済効果を332億2千万円とはじいている。

 これら「基地効果」は、自衛隊との共存共栄を掲げる市や地元経済界などのよりどころだ。海軍時代からの呉の歴史に詳しく、呉市史編さんにも当たる市参与千田武志さん(67)は「基地と呉はいわば運命共同体。共存は今後も続く」とみる。

(2014年9月2日朝刊掲載)

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