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連載・特集

緑地帯 「ミリキタニ」と出会う 峰崎真弥 <2>

 ジミー・ツトム・ミリキタニは米カリフォルニア州サクラメント生まれの日系2世。生後間もなく日本に移り、母親の故郷、広島県五日市町(現広島市佐伯区)で育った。

 絵が大好きな子で、日本画家の木村武山から雅号ももらったという。「自分は戦争ではなく美術がしたい」と、18歳の時、戦時色の強まる日本から米国に戻る。クリーニング店などで働きながら絵筆を執り、ワシントン州シアトルに住む姉の元へ身を寄せた。

 ところが、日米開戦後、日系人は「敵性外国人」として強制収容所に集められる。日本美術の力を知らしめようとした彼の志も、米国に求めた自由も打ち砕かれた。彼は戦後、その怒りを胸に、料理人などをしながらアーティストとして歩む。

 彼が収容されたのはカリフォルニア州のツールレイク日系人強制収容所。そこは何と、私と同じ江田島に今、住んでいる祖母のいた収容所でもあった。母が私に映画「ミリキタニの猫」を薦めたのはそんな訳があったのだ。

 私は2011年、米国を旅してミリキタニ本人、「ジミーさん」に会うことができた。映画にも描かれているように、既にニューヨークでの路上生活を脱し、高齢者施設に移られていた。

 室内の自作を前に延々と解説してくれる。当時90歳。映画に映し出されたような怒りより、むしろ優しさを感じさせる人だったが、内に秘めたエネルギーが伝わってきた。人権と平和を当たり前に望む、偽りのない勇気が。お会いできて本当にうれしかった。(アーティスト=江田島市)

(2014年8月21日朝刊掲載)

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