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連載・特集

緑地帯 「ミリキタニ」と出会う 峰崎真弥 <7>

 映画「ミリキタニの猫」の上映会を7月26、27日、江田島市江田島町の海友舎で開くことができた。明治末の建築と伝えられる古い洋館。壁にしつらえたスクリーンに、反骨の日系人アーティスト、ジミー・ツトム・ミリキタニの人生が映し出された。

 海友舎は、旧海軍兵学校の下士官たちが用いた福利厚生施設だった。戦後、洋裁教室などに使われ、会社の事務所になった。老朽化が進み、2012年9月に事務所は撤退するが、何とか残したいという思いを持った有志が集まり、交流施設としての活用に挑んでいる。

 江田島を拠点に活動している縁で私にも声が掛かり、仲間に加えていただいた。戦争を生き延び、再生へ向かう、過去と未来が交錯する建物。この映画を上映するのにふさわしいと思った。

 上映会では、参加した人に何らかの「当事者」となってほしい、と考えた。会場に、在米日系人の歴史について解説を展示し、私の祖母をめぐる家族史も書き込んだ。参加者が、自分の家族史に目を向けるきっかけになればと思ったから。交流会や、絵を描くワークショップも開いた。

 映画のプロデューサーのマサ・ヨシカワさんや私の祖母にトークをお願いした。私が11年、マサさんの案内で、米ニューヨークにジミーさん本人を訪ねた時の映像も流させてもらった。

 ミリキタニ、祖母、アート、江田島…。それらがつながる空間をつくり、共有したいと願ったイベントだった。多くの人の力添えで乗り切ることができた。(アーティスト=江田島市)

(2014年8月28日朝刊掲載)

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