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連載・特集

海自呉地方隊60年 第5部 基地と地域 <2> 支える団体 財界・家族・OB… 後方支援

 海上自衛隊呉教育隊体育館(呉市幸町)で7月5日にあった呉地方隊60周年記念式典。「部隊を支えるのは呉の温かい人々」。当時の三木伸介呉地方総監は、ねぎらいの言葉とともに民間8団体と2人に感謝状を贈った。

 地元には海自隊を支えるさまざまな組織がある。財界、家族、OB…。民間による「後方支援」である。

 表彰団体の一つ、広島県自衛隊父兄会。呉市では下部組織の呉地区支部協議会が若い隊員の精神的な支えとなる。毎年、呉教育隊の内定者の激励会を開くほか入隊式、海外任務の艦船の送迎行事への参加も欠かさない。

 10年近く呉地区の約300人を束ねてきた協議会の平本喜江会長(67)=呉市阿賀南。娘2人と娘婿2人が自衛官だ。「市民と隊員の気持ちを知る者として両者の懸け橋になりたい」

不安な親励ます

 「息子が隊を辞めたいと言っている」など時折、隊員の父兄から相談を受ける。昇任試験、組織の人間関係といった壁にぶつかった子の姿を見て親は不安を抱く。そんな悩みに耳を傾けて励ます。

 東日本大震災の被災地支援など、隊員が過酷な任務に当たる機会は増え、「家族支援」は県父兄会のレベルでも重要なテーマになりつつある。平本さんは「隊員を支える家族を、私たちが支える」と言う。

 主に幹部隊員とのつながりが深いのが、呉海上自衛隊後援会。約170の法人・個人が加入。経営者や市民有志が名を連ねる。新任幹部が乗る練習艦隊の壮行会を催したり、隊主催の交流行事に参加したり、隊と地元の社交の場を形成する。

 会長の神津善三朗呉商工会議所会頭は「商売上の関係だけではない。隊を支える使命感が第一」。呉海上自衛隊婦人協力会は親善目的で呉基地を訪れた外国艦船の隊員を茶会でもてなすなど、民間ならではの協力も担う。

婚活イベントも

 飲食、遊技業者たちでつくる呉海上自衛隊協力会は、若い隊員を応援する。独身隊員と若い女性を招いて2007年から開いているボウリング大会は、「婚活イベント」としてすっかり定着した。

 集団的自衛権の行使容認など自衛隊を取り巻く環境は変わっていく可能性がある。幹部から海曹、海士まであらゆるクラスの隊員に多くの団体、有志がさまざまな立場で関わり合う呉の町。重層的な支援や協力体制は変わらないという。(小島正和)

(2014年9月3日朝刊掲載)

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