×

ニュース

カンボジアに届けた愛 広島土砂災害 犠牲の岡村さん 10学校の建設支援

 子どものために尽くした思いを忘れない―。広島市の土砂災害は、カンボジアの学校建設を支援してきた岡村健二さん(89)=安佐南区緑井7丁目=の命も奪った。内戦で荒れた異国の教育再生を願い、惜しみなく私財を投じた岡村さん。納骨式が8日、安佐南区であり、悲しみに暮れる仲間たちは、あふれた愛と遺志を受け継ぐ誓いを立てた。(浜村満大、久保田剛)

 岡村さんは信仰心のあついカトリック教徒だった。通った安佐南区の教会の神父たちが2001年、カンボジアの首都プノンペンから北西約300キロの都市バッタンバンを訪問。ポル・ポト派が知識人を粛正した影響で、子どもの通学もままならない現状を知り、支援団体「バッタンバン友の会」を設立した。

 「老後に大きな蓄えはいらない。子どもたちの未来のために使ってほしい」。岡村さんは支援に共感した。テレビ局を退職後、夫婦2人暮らしで子どもがいなかったこともあり、多額の寄付を申し出た。03~07年、寄付金を基にプノンペンやバッタンバンに10の小学校や中学校が建設された。「岡村学校」と呼ばれているという。

 「岡村さんのおかげで何百人、何千人もの子どもたちが勉強できた」。現地を訪れることはなかった岡村さんに学校の様子を伝えてきたルイス・カンガス神父(88)=山口市=は、納骨式で感謝を口にした。

 岡村さんの弟道信さん(79)=広島市中区=は寄付を岡村さんが亡くなった後に知った。「寄付について語らず、当然のように振る舞う。そういう人でした」と悼んだ。友の会の神谷和佐子事務局長=安佐南区=は「いつもの穏やかな笑顔で、天国からカンボジアの子を見守ってくれている。豊かな教育を願った遺志を引き継ぎたい」と話した。

 岡村さんの訃報が伝わった現地の教会でも追悼ミサが開かれた。約3700キロ離れた地で悼む心がつながった。

(2014年9月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ