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連載・特集

ブンカの強豪 放送 国泰寺高(広島市) 記録し伝える「技」磨く

 9月中旬。広島市中区の国泰寺高の体育祭。放送部員が集う本部テントそばの放送席は、活気と緊張感に満ちていた。

 司会進行を務める部員の横で、ミキサー担当が手際よく操る。競技が始まると実況担当がすかさずリポート。記録用の6台のビデオカメラは「絵」になる場面を追う。テレビ局さながらの仕事ぶりだ。

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 同校の放送部員は24人。テスト期間中などを除き、ほぼ毎日活動する。内容は実に多彩。学校紹介ビデオや部活のCM制作、学校行事の司会準備や毎日の校内放送、放送技術を競うコンテストに向けた個人部門の練習と番組の取材…。

 入部したてはほとんどが未経験者だが、先輩から後輩へと一から技術やノウハウが伝えられている。2学期ともなれば1年生を含む全員が、アナウンサー兼記者兼ディレクターとして幾つもの役割をこなす。

 イベント前や番組制作が佳境に入ると休日もない。「苦しいときもあるけど、形になったときの喜びが大きい。毎日充実している」と副部長の2年森山遼さん(16)。今は秋のコンテストに向け、テレビ番組の取材を進める。「何もないところから高校生の視点で何を発信するか議論し、考えるプロセスが楽しい」

 日々の精進は、コンテストでの結果にも表れている。6月のNHK杯広島県大会では、同部から朗読部門で1位、アナウンスで6位入賞。ラジオドキュメントでは2位。テレビドキュメントでは、原爆で多くの仲間を失った広島一中(現国泰寺高)の生徒による追悼集をテーマにした「泉~69年前を語りつぐ」が1位になった。テレビドラマ、ラジオドラマともに2位。総合では堂々の1位に輝いた。

 部長の2年森脇実穂さん(17)が携わり2位になったテレビドラマは、夢見がちな女子が図書室で見つけた男子生徒に運命の出会いを仕掛けるコメディータッチ。「みんなで悩み、一つの番組を作り上げた時は本当にうれしい」と話す。上級生たちの妥協を許さない姿勢や堂々と司会をする姿に憧れ、番組作りやアナウンスを覚えた。「部活を通じて、人前に出て話すこともできるようになった」と森脇さん。今度は自分が後輩にしっかり声を掛けたいという。

<メモ>放送部員が技術を競う舞台には、NHK杯全国高校放送コンテスト、全国高校総合文化祭などがある。いずれもアナウンス、朗読、番組制作など複数の部門があり、各都道府県大会を上位通過した学校・生徒が参加できる。7月に東京であった第61回NHK杯には1681校が出場。中国地方では、朗読で尾道北の生徒が上位10位以内の「優良」、ラジオドキュメント部門では前年優勝の五日市(広島市)が「優良」を獲得した。

(2014年10月4日朝刊掲載)

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