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連載・特集

海自呉地方隊60年 第6部 インタビュー編 <2> NPO法人くれ街復活ビジョン代表理事・大年健二氏 

隊員6000人 貴重な消費者

 ―呉の町にとって、海上自衛隊呉基地はどんな存在ですか。
 地元に大きな経済的な恩恵をもたらす。艦船修理、糧食や消耗品などの発注があり、業者が納品する。約6千人もの隊員が消費者になる。住宅市場は隊員が支えているようなものだし、金融機関にとっても大きな顧客。基地がなければ、呉の支店は縮小するだろう。

 ―呉の町は基地とどう向き合っているのでしょう。
 旧海軍時代の歴史があるせいか、市民は呉に海自隊があるのを当然と思っている。呉地方総監部の呉地区の年間予算はざっと830億円。他市からみれば決して当然ではない。逆に呉は基地の需要に応え切れているといえない。隊員は日常の消費は地元でするが、耐久消費財の購入やちょっとした飲み会といった高額な消費の際は広島へ流れると聞く。消費の観点で、隊員にとり呉が魅力的であるかは課題が残る。

 ―基地と町の経済的な関係ばかりが強調されがちです。
 海軍時代の遺産と合わせ、自衛隊は観光面で大きな存在。潜水艦や大型艦船が間近に迫る景色はそうない。現役と昔、つまり海自隊呉史料館てつのくじら館と大和ミュージアムが並ぶ呉港の一帯は象徴的な存在だ。

 ―基地がまちづくりに及ぼす弊害は。
 広大な基地の敷地を民間利用できればという声は昔からある。確かに狭い市中心部の一等地を基地が占めている。だが今、あんな広大な土地の活用策が民間にあるのか。埋め立て地の阿賀マリノポリスにも空きがある。仮に基地が出て行き、予算がなくなったらと思うとぞっとする。

 ―海自隊に望むことはありますか。
 軍事的な意見は専門家に譲る。個人的には必要な存在と考えている。海自OBには活動的な方が多く、まちづくりも支えてくれている。平和主義の立場で反基地を訴える人もいるが、市民は是認派が圧倒的ではないか。

 一方、隊員の不祥事は気になる。機器のハイテク化、任務の多様化でストレスが増えているのだろうか。適切なマネジメントが求められるだろう。(聞き手は小島正和)

おおとし・けんじ
 1945年、呉市生まれ。三津田高、早稲田大を経て68年、日本銀行入行。93年、呉信用金庫に入り、2000年9月から理事長。13年6月に退職。NPO法人くれ街復活ビジョン代表理事。

(2014年10月16日朝刊掲載)

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