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2015統一選へ半年 広島市長選 現職 再選へ立候補か 野党は別候補擁立も

 2011年の前回市長選で、自民党広島県連に推されて初当選した現職の松井一実氏(61)が、再選を目指して立候補するとの見方が強い。JR広島駅(南区)周辺の再開発など街づくりを堅実に進めたとして、経済界にも支持は広がっている。現時点では、無所属での立候補を表明している横浜市中区の執筆家荒木実氏(71)のほかに、目立った動きはない。

 自民党県連の後ろ盾を得て、市政を運営してきた松井氏。6月に地元の経営者たちによる政治団体「松井さんを支える会」が発足し、再選への決意を示す環境は整いつつあるとみられていた。その中で8月20日に土砂災害が発生。初動対応や危機管理の在り方を市議会で追及された松井氏は、進退について「災害復興を含む街づくりのビジョンをまとめた上で判断する」と話すにとどめている。

 県連は、松井氏の立候補表明と推薦要請を待って対応を判断する構え。東区出身で厚生労働省官僚だった松井氏を担ぎ出した経緯から、幹部の一人は「要請があれば断る理由はない」とする。前回、自民党と共に松井氏を推薦した公明党県本部の幹部は「自民党県連と連携しながら、判断したい」と話す。

 一方、前回は女性の元副市長を支援した民主党県連は「松井氏の1期目の評価をした上で対応を判断する」。同党と共同歩調を取る連合広島も「現時点で白紙」。共産党県委員会は市民団体と連携して、候補を立てる方針だ。維新の党県総支部も擁立を検討。次世代の党県支部連合会、社民党県連合は未定という。

 ただ自民党県連所属の市議たちの間には「反松井」色も広がっている。

 きっかけは松井氏が2月に表明した安佐市民病院(安佐北区)の移転、新築計画だ。市長選で松井氏を支えた最大会派である自民党保守クラブは、会派内で賛否が割れた揚げ句、「親松井」派が離脱して分裂。「市長与党」は半数を割った。市長と距離を置く自民党市議を中心に「広島市連」を設立する動きがあり、別の候補擁立を県連に迫る可能性もある。

 選挙では、官民設置の検討協議会で議論が大詰めとなっている市中心部へのサッカースタジアム建設の是非や、どのように災害からの復興と街づくりを進めていくのかが争点になりそうだ。来年は被爆70年。被爆地のリーダーとして「核兵器のない世界」の実現を、国内外に働き掛ける力量も問われる。

 平和関連の本を出している荒木氏は07年の市長選に初挑戦し、落選。11年も立候補を目指したが「家族の健康上の問題」で見送った。今回は13年3月に早々と立候補を表明しており、「核兵器廃絶を訴えたい」と話している。(川手寿志)

(2014年10月17日朝刊掲載)

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