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連載・特集

廃炉の世紀 第1部 先進地欧州 <9> 地層処分(フランス)

地下500メートル 廃棄物隔離 貯蔵期間 想定10万年超

 廃炉で出る廃棄物の中でも、最もやっかいな「核のごみ」である高レベル放射性廃棄物。すぐに消し去る方法はなく、原発を動かしている間にも生み出され続ける。これをどこに眠らせるか。フランスは、人口100人足らずの村に近い地下深くを選んだ。

 パリの東約250キロ。麦畑や牧草地が広がる高台に近代的な建物が見えた。ビュール地下研究所。その地下500メートルに広がる粘土層に、高レベル放射性廃棄物を埋めて安全に隔離できるかを調べている。国は2025年の搬入を目指し、研究所の周辺で最終処分場を建設しようとしていた。

 地上に位置を知らせる衛星利用測位システム(GPS)を身に着け、ゴンドラで地下へ降りた。「想定する貯蔵期間は10万年以上だ」。処分事業を進める放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のエリック・ストルさん(62)が説明する。

 使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物はステンレス鋼製の容器に詰め、さらに別の容器に入れて地下の穴に詰める。総延長1・5キロのトンネルで、100分の1ミリ単位で地層の変化を測定したり、ガラスや容器の腐食を調べたりする作業が進んでいた。

 地域では、廃棄物の輸送の在り方を含めて反対運動が続く。村の中心に、反原発の市民グループが04年に民家を買い取って拠点にした「抵抗の家」がある。ここで暮らすフランソワ・マティベさん(53)は「国は最初からビュールを狙い、押し切った」と批判する。

 「放射性物質は持ち込まない」との合意で1999年、地下研究所の設置は決まった。06年の法改正で「処分場を申請できるのは地下研究所がある地域に限る」とされ、ビュールへの建設が既定路線となった。研究所が稼働した00年から、地元の自治体に巨額の助成も始まっている。

 ビュールでの最終処分は、処分場建設に入ったフィンランドなどに続く世界の先進例になる。その阻止に、マティベさんは特別な意味を込める。「核のごみに解決策はない。なのに、埋めて隠してしまえば人々は原発がある未来を受け入れてしまいかねない」

 10万年以上もの間、本当に廃棄物を管理できるのか―。地質学者でもあるANDRAのストルさんは「個人的に最終処分に不確実性がないとは言えない」と率直に認める。容器が腐食して中身が溶け出し、地下水に混じる可能性を否定できないからだ。

 最終処分場は廃棄物を入れ終えるまでの100年間、埋めた廃棄物を取り出せる計画になっている。将来の技術の進歩にも可能性を開く。ストルさんは問い掛ける。「自分たちが生んだ核のごみを放置していいのか。いま計画を進めることが、未来に責任を果たす決断ではないのか」

フランスの高レベル放射性廃棄物処分
 使用済み燃料を再処理する過程で生じる廃液を固めた「ガラス固化体」の形で地層処分する方針。再処理施設などで貯蔵しているガラス固化体は2700立方メートル(2010年末時点)。国は15年にビュール周辺への処分場の設置許可を申請し、25年に操業する予定。

(2014年11月7日朝刊掲載)

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