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連載・特集

廃炉の世紀 第2部 日本の選択 <2> 長期化(浜岡・東海原発) 

廃棄物の処分場所 壁 安全管理の方法も未定

 長さ約4・5メートルの未使用燃料を、クレーンが貯蔵プールから1体ずつ取り出していく。2009年に廃炉作業が始まった中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)1、2号機。来春までに全燃料を建屋内から運び出し、本格的な施設の解体に入る予定でいる。

 中部電は、耐震性を高める工事に膨大な費用と時間がかかり「経済性に乏しい」として08年、停止中だった2基の廃炉を決定。当時は、新たに出力140万キロワット級の6号機を建設する計画と合わせた「建て替え(リプレース)」の位置付けだった。浜岡原発は、同時並行で2基を解体する国内初のケースになる。

 燃料の搬出は、廃炉の第1段階。「燃料を運び出してしまえば、原発内に残る放射性物質の9割以上を取り除ける」と担当者。放射線量が高い原子炉の周辺から徐々に解体撤去し、36年度に廃炉を終える予定だ。

 商業原発で廃炉に入ったのは、浜岡原発と、国内初の商業原発で01年に廃炉を始めた日本原子力発電東海発電所(茨城県東海村)の計3基。いずれも廃炉に30年程度かかると見込む。業界は「技術的な課題はない」とする。ただ、大量に発生する放射性廃棄物が作業の行く手を阻む。

 廃炉に伴う核のごみをどこで処分するかは決まっていない。さらに、いかに安全に管理するか、国の規制基準の整備も後手に回っている。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「原子炉の解体一つをとっても相当量の廃棄物がいろいろなレベルで出る」として、問題点の整理を原子力規制庁に指示している状況だ。

 浜岡原発の廃炉で発生する予定の低レベル放射性廃棄物は約1万7千トン。中部電は「処分法などが決まらない限り、放射性廃棄物が出る設備の解体はしない」とする。来春までに処分法を決めなければ、作業の延期は避けられない。

 廃棄物の処分法が決まらず、東海原発は既に計画を2度延期した。ことし4月に始まるはずだった原子炉の解体も「19年度」に5年延期されている。原電は、極めて放射線量が低い廃棄物については敷地内に埋める方針を示しているが、原電廃止措置プロジェクト推進室の苅込敏調査役は「地元の了解はまだ得られていない。地道に理解を求める必要がある」とする。

 東海原発は廃炉費用を約885億円、浜岡原発は2基合計で約840億円と見積もるが、長期化すれば費用は膨らむ。

 脱原発を目指す市民団体「原子力市民委員会」(東京)は「廃炉を百年の大計に」と訴える。放射線量が自然に減るのを待つために「汚染の強い部分を数十年から100年程度、遮へい隔離し、その後に放棄するか、解体するかを決めるべきだ」と提言する。

廃炉に伴う放射性廃棄物
 国がモデルとして示している110万キロワット級の沸騰水型軽水炉(BWR)で生じる解体廃棄物の試算は約54万トン。高レベル放射性廃棄物を生み出す使用済み燃料は含まれていない。放射性廃棄物は約2%に当たる約1万3千トンで、全て低レベルの放射性廃棄物に当たる。放射能レベルに応じて3段階に分け、地中に埋めて処分する計画。

(2014年12月7日朝刊掲載)

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