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核の非合法化 討議へ ウィーン会議 米英参加し開幕 広島被爆の女性 証言

 核兵器が人体や地球環境に及ぼす影響を議論する「核兵器の非人道性に関する国際会議」が8日、オーストリアの首都ウィーンで始まった。2日間の日程。核兵器保有5大国では初となる米国と英国を含め、約160カ国が参加した。核兵器の非合法化についても討議されるとみられ、各国政府代表の発言が注目される。(ウィーン発 田中美千子)

 冒頭に、会議を主催するオーストリア政府のクルツ欧州・国際関係相(外相)が演説。「核なき世界の実現へ、言葉だけでなく実行に移す時だ」と強調した。広島市南区出身でカナダ・トロント市在住の被爆者サーロー節子さん(82)が広島での被爆体験を証言。「必死に警告を発してきた被爆者は核軍縮の停滞に失望している。核兵器禁止条約へのプロセスを始めてほしい」と力強く訴えた。

 討議では、米国の政府代表が「核兵器は最終的になくしたいが、廃絶に向けた具体的な日程を決めるのは反対だ」と表明。「安全保障上の環境が整わないと軍縮は進められない」とし、従来掲げる「段階的な軍縮」の推進を唱えた。

 日本政府代表団の一員として、広島大の星正治名誉教授(放射線生物・物理学)も発言。自らが取り組むビキニ水爆実験の被害調査に言及し、内部被曝(ひばく)の影響について研究を深める必要性を訴えた。

 会議は昨年3月のノルウェー、ことし2月のメキシコに続き3回目。核兵器の非人道性に焦点を当て、核軍縮の停滞を打開する狙いがある。初参加の米英は、非保有国の政府や非政府組織(NGO)が主導する核兵器の非合法化の議論に歯止めをかけたい思惑もあるとされる。

 初日は核実験の被害者や核問題の専門家が、人体への影響などについて発表。2日目は核兵器と現行の国際規範との関わりなどをテーマに討議し、議長総括をまとめる。

 日本政府からは、佐野利男軍縮大使たちが出席。NGO枠では、平和首長会議(会長・松井一実広島市長)の代表として広島平和文化センターの小溝泰義理事長も参加している。

(2014年12月9日朝刊掲載)

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