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社説・コラム

天風録 「海江田さん、別れの詩」

 ふと気付けばことしもあと2週間ほどである。どうも落ち着かず、年越し準備が進んでいない。そんな人も多いのでは。選挙が慌ただしく終わった。何のことはない。1強多弱のまま。脱力感が人に街に漂っている▲電光石火の解散で仕掛けた。思惑通りの結果に違いない。アベノミクスが信任されたとして、安倍晋三首相がきのう決意を語っていた。「全身全霊をもって」職責を果たす、と。あまり触れないでいた改憲への意欲も▲「粉骨砕身全此生(しせい)」。身を粉にして生を全うする、という意味らしい。首相の言葉とどこか似ているけれど、こちらには悲壮感がにじむ。2年前、民主党の海江田万里氏が詠んだ漢詩の一節である。下野した党を率いる覚悟を刻んだ▲議席こそ増やしたものの、再び敗れたも同然だろう。何しろ代表が涙をのんだのだから。野党第1党の党首が落ちるのは65年ぶり。きのう辞任を表明した。心境を託す言葉はなかったが察するに「心身片々」だろうか▲だが身の振り方を問う質問には、きっぱりと返した。「私は政治的な動物ですから」。冬ごもりして体力を蓄え、国政の舞台に戻るつもりらしい。幾つ年を越せば春を迎えられるだろうか。

(2014年12月16日朝刊掲載)

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