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連載・特集

アフリカへ モザンビークの青年海外協力隊 <上> 幼児教育 新村桂さん(26)=三原市

途上国で学び 「恩返し」

 アフリカ南東部モザンビークは、石炭や天然ガスといった資源が豊富で、大地が広がる雄大な国だ。各国が開発支援し、年6~8%の経済成長を続ける。ただ世界最貧国の一つであることに変わりはない。内戦の影響で十分な教育を受けていない世代も多く、人材育成が急がれる。そのモザンビークで、住民に寄り添う広島県ゆかりの青年海外協力隊員がいる。11月に現地を訪ねた。(新本恭子)

 新村桂さん(26)の姿を認めると、約30人の子どもが集まってきた。「キラキラキラキラ、手はお膝」。手遊び歌で落ち着かせ、お絵描きが始まる。「かつら、かつら」。描いた絵を見せようとする子どもたちが再び大騒ぎする。新村さんは笑顔で頭をなでて回った。

 16世紀からの植民地支配の名残で、ポルトガル様式の建築が残るモザンビーク島。世界遺産だ。新村さんは幼児や小学生の教育を助ける非政府組織(NGO)に属す。島内の小学校で美術などを教え、この日訪れた対岸の幼児施設に週1回赴く。

 教育の個人差は大きく、各人の段階に対応できるよう宿題プリントを作る。紙は乏しく、自分の帰国後も続くよう現地企業に支援を頼んで回る予定だ。

 隊員を志したきっかけは高校2年。母親の勧めもありベトナムで1週間、児童養護施設のボランティアをした。同年代の少女に接し「努力しても思い通りに生きられない人生がある」とショックを受けた。

 津田塾大で国際協力を学んだが、途上国への援助の在り方に疑問を感じ、東京の人材派遣会社に就職。やりがいはあったが、社会に出て感じたのは「頑張っても、自分が深く関われるのは目の前の一人くらいのもの」。多くのことを学ばせてくれた途上国の人々に恩返ししたいとの思いが膨らんだ。昨年3月に結婚し夫の転勤で三原市へ。同市の児童館で約1カ月、子どもとの接し方を学んだ。

 家族や日々の食事を大切にするモザンビークの人々に学ぶことは多い。「仕事第一の日本の暮らしを振り返る機会にもなった」。着任1年。「少しでも子どもの興味を広げる手伝いがしたい」と張り切っている。

青年海外協力隊
 政府開発援助(ODA)の予算で国際協力機構(JICA)が派遣。応募できるのは20~39歳。原則2年間、受け入れ国政府などが求める分野で活動する。10月末現在、アフリカ、アジア、中南米などの69カ国で1887人が活動する。現地での生活費は、受け入れ国の住民と同程度の生活ができる最低限の金額(月290~830米ドル)をJICAが支給する。

(2014年12月16日朝刊掲載)

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