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連載・特集

廃炉の世紀 第2部 日本の選択 <10> 問題提起(島根原発など)

停止後も地域と共存 管理や支援 在り方探る

 原子力発電所の廃炉は、立地地域の経済や財政、雇用に大きな影響を与える。これから迎える廃炉時代は、地域がいかに原発との関係を結び直すかの分岐点でもある。

 「(原発が)廃炉になっても、核燃料はプールにある。一定のリスクが存在し続けるという意味で原発への対応は残る」。国から存廃の判断を迫られている中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)1号機。島根県の溝口善兵衛知事は先月末、廃炉後も立地地域への財政支援が必要とする理由を説明した。

 20~30年に及ぶとされる廃炉作業に加え、使用済み燃料や廃炉に伴う放射性廃棄物の敷地内での保管という状況と、地域は「共存」する必要がある。一方で、現行の国の電源立地交付金制度は、原発が運転を停止した後の地域への支援を想定していない。

 1号機の立地に伴って年に数億円が交付されている松江市の松浦正敬市長も「廃炉の過程は長期間にわたるため、その代償措置として何らかの形のものは必要だ」との考えを示す。

 運転30年超の原発には、1原発に最大25億円の「立地地域共生交付金」を上乗せする国の仕組みもある。中部電力が2009年に廃炉を決めた浜岡原発1、2号機(静岡県御前崎市)では、この交付金で実施予定だった地域振興事業への「配慮」を静岡県などが中部電に要請。中部電は支払われなかった交付金に相当する約22億円を県に寄付した。

 ただ電力小売りの全面自由化を前に、今後も中部電のような「補償」が実現するかは不透明だ。廃炉で電力会社に巨額の損失が発生するとして、政府内では自由化後も廃炉費用を全ての電力利用者に負担させる案も浮上している。

 廃炉後、地域への支援の枠組みはどうなるのか。他の立地地域からは踏み込んだ意見も出始めている。

 「単に運転終了後も交付金は減らさないという発想でなく、長期にわたる安全対策や立地地域支援など新しい仕組みが必要だ」。原発13基が集中する福井県の西川一誠知事は、国の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会でこう訴える。

 原発問題では「もの言う知事」の一人。廃炉に伴って取り出される使用済み燃料の中間貯蔵をめぐっては施設の「福井県外への立地」を強く主張する。対応を求められた関西電力は、県外を想定した候補地選びの準備を既に進めている。主張の根幹にあるのは「これまで多くの電力を消費してきた大都市など消費地の責任で対応すべきだ」とする考え方だ。

 原子力施設が一部の地域に集中立地する半面、電力供給の恩恵を広く消費者が享受してきた。発電の役割を終えた原発、後に残る放射性廃棄物と、私たちはどう向き合うのか。廃炉の時代は、社会全体に問い掛けている。(山本洋子)=第2部おわり

(2014年12月18日朝刊掲載)

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