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連載・特集

アフリカへ モザンビークの青年海外協力隊 <下> 教育 舟木耕太さん(29)=三原市

「集団で学ぶ意義」伝え

 質問が飛び交う教室。答えようと競り合う大きな声も響く。黒板の前の舟木耕太さん(29)はよく通る声で授業を進める。生徒の元気の良さに負けてはいない。ポンポンと飛び出すポルトガル語のテンポは速い。

 首都マプトの北東約200キロ、ガザ州の州都シャイシャイ。7月に着任し、約3800人が学ぶ国立の中等教育学校(日本の中学と高校程度の内容を扱う学校)で、数学の教師を務めている。

 福山市の神辺中の教諭。教員の身分を保ったまま参加できる現職教員特別参加制度を活用し、青年海外協力隊員となった。「生徒の家庭環境や勉強へのモチベーションなど一人一人全く違う」。現地の子どもの成長を願うとともに、帰国後はこの経験をどう生かすか考えながら取り組む。

 小学生のとき、国際的な視野に立って物事を見る姿勢を恩師に教わった。東京理科大の学生時代は、フィリピンで住民との協力で橋を造る2週間のワークキャンプに参加。「国を超えて人間関係ができた。内向的だった自分の悩みを小さく感じた」。世界をもっと見てみたいと思った。

 希望通り教職に就き、4年目のとき、国際協力機構(JICA)の研修でネパールの青年海外協力隊の活動を視察、海外への思いを深めた。そして決断した。

 モザンビークでは留年は珍しくない。仕事をしてから登校する生徒、酔っ払っている生徒…。欠席や遅刻も多い。一方で食らいつくように質問を繰り出す生徒も。劣等感を抱いていたり人との関わりに飢えていたり。携帯電話を授業中に操作する生徒もいる。日本と同じ問題や課題もある。

 「集団で学ぶ大切さに生徒も同僚教師も気付いていない」とも感じる。「学力さえ付けばいいという人が多いが、関わり、互いの夢を語り合うことは重要」と信じる。日本の教育の良さを足跡として残したい。学校全体を巻き込んだ取り組みにしたいとの思いを強めている。(新本恭子)

(2014年12月18日朝刊掲載)

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