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HICARE 20周年

■記者 金崎由美

被曝者医療の研修定着 原発事故での貢献模索

 被爆者医療の蓄積を世界の核被害者支援に生かすことを目的に活動している広島県、広島市を中心とした放射線被曝(ひばく)者医療国際協力推進協議会(HICARE)が今月、設立20年を迎えた。各国の医師たちを招く研修事業が定着する一方で、多角的な貢献についての模索が始まっている。

 HICAREは、旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発事故を機に1991年4月に設立された。県と市が事業費を折半し事務局は県に置く。県医師会と市医師会、広島大原爆放射線医科学研究所、同大病院、放射線影響研究所、広島赤十字・原爆病院などで構成。広島赤十字・原爆病院の土肥博雄院長が会長を務める。

 活動の柱は、医療従事者の受け入れ研修▽専門家の派遣▽シンポジウムなどを通した啓発活動―の3点。

 受け入れ研修では、被曝者医療や在外被爆者を担当する韓国、ベラルーシ、ブラジル、ロシア、米国など15カ国の医師や専門家たちを延べ1253人招いた。5日~2カ月間の研修で被爆者検診の流れ、がんの診断法などを幅広く学ぶ。

 緊急時の専門家の国内派遣では1999年の東海村臨界事故に続いて今回、福島第1原発事故で専門家チームとして放射線技師や看護師たち6人を福島県に派遣。避難住民の線量測定などを行った。今後も復旧作業で被曝した作業員たちの長期的なケアを視野に、実践的な取り組みを模索する。

 昨年8月には国際原子力機関(IAEA)と被曝者医療分野で人材交流などの覚書を交わした。国際機関との連携強化を目指している。

(2011年4月19日朝刊掲載)

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