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NPT再検討会議開幕 NY 核なき世界へ議論

 5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が27日、米ニューヨークの国連本部で開幕した。5月22日まで4週間の会期中、加盟190カ国が核軍縮や核不拡散の課題を議論し、今後の道筋を探る。被爆地広島、長崎が訴えてきた核兵器の非人道性に各国の理解が深まる今、「核兵器なき世界」への具体策を含む最終文書に合意できるかどうかが焦点になる。 (ニューヨーク発 田中美千子)

 初日は、アルジェリアの女性外交官タウス・フェルキ氏を議長に選出した。岸田文雄外相(広島1区)をはじめ各国政府代表らの一般討論演説が4日間続く。5月1日の非政府組織(NGO)セッションでは、平和首長会議会長の松井一実広島市長や広島の被爆者たちが、核兵器廃絶を訴える予定。2週目以降はNPT三本柱の「核軍縮」「核不拡散」「原子力の平和利用」の各委員会で討議し、終盤には成果を最終文書にまとめる協議が本格化する。

 2010年の前回会議は64項目の行動計画を柱とする最終文書を全会一致で採択したが、今回は難航するとの見方がある。段階的な核軍縮を主張する核兵器保有国と、核兵器の非人道性に焦点を当てて違法化を目指す非保有国との間に溝が存在。ウクライナ問題で核超大国の米国とロシアの関係が悪化し、核をめぐる国際情勢も厳しいためだ。

 日本政府も、米国の差し出す「核の傘」に頼る安全保障との整合性から現時点では違法化に消極的で、被爆国として指導力をどれだけ発揮できるか不透明だ。

 一方、被爆70年の節目に、老いた被爆者たちが会議に合わせて訪米。国連本部で開かれている日本被団協の原爆展などで、各国政府や国連の関係者に原爆被害を証言する。平和首長会議も集会などで核兵器禁止条約の交渉開始を求める。

核拡散防止条約(NPT)
 1970年に発効した核兵器廃絶を理念に掲げた多国間条約。締約国は約190カ国。事実上の核保有国のイスラエルと、インド、パキスタンは未加盟。北朝鮮は2003年に脱退を宣言した。核保有国を米国、ロシア、英国、フランス、中国に限定し、核軍縮の義務を課した。非核保有国には原子力の平和利用を認め、核兵器製造や取得を禁止、国際原子力機関(IAEA)の保障措置(査察)受け入れを義務付けた。

(2015年4月28日朝刊掲載)

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