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連載・特集

基地のまちは今 動きだす岩国米軍施設整備 <中> 爆音の懸念 鳴り響く 

厚木の苦悩 艦載機移転 影響示されず

 耳をつんざくようなごう音が会話をさえぎり、人の歩みを止める。4月28日正午前。神奈川県大和市と綾瀬市にまたがる米海軍厚木基地から、FA18スーパーホーネットが次々と飛び立った。約2時間後、訓練を終えたのか、同じ機体が相次いで戻る。その間も基地滑走路では別の米軍機がタッチ・アンド・ゴーを繰り返す。空は鳴りやまない。

空母から飛来

 騒音を振りまくのは、約40キロ離れた同県横須賀市の米海軍横須賀基地を母港とする原子力空母ジョージ・ワシントンの艦載機だ。空母が入港する前に厚木基地へ飛来し、入港中は厚木を拠点に飛行を繰り返す。

 「空母の出港が近いとよく飛ぶ」。地元住民が言う通り5月18日、空母は横須賀を出港。艦載機は14日までの9日間、硫黄島(東京都)で滑走路を空母の甲板に見立てた陸上空母離着陸訓練(FCLP)をこなした後、洋上の空母に戻ったとみられる。

 これら艦載機部隊は在日米軍再編に伴い、2017年ごろまでに厚木から米海兵隊岩国基地へ移る予定だ。計画では59機とされているが、実際の機数や機種は移転時の状況で変わる可能性がある。ジョージ・ワシントンは大規模整備のため、今秋に同型艦のロナルド・レーガンと交代することが既に決まっている。

 住民が長年騒音に苦しめられてきた大和市は一日も早い移転を望むが、「移転後の運用や、どれくらい負担が減るのかといったことは国から示されていない」(基地対策課)という。基地監視団体「リムピース」の頼和太郎さん(66)=千葉県習志野市=も「肝心なのは艦載機がどこの空域で訓練するかだ。空母は移転しないので、厚木を拠点とする訓練が残る可能性もある」と推測する。

試験飛行なく

 住宅街に隣接する厚木基地と違い、移転先の岩国基地は海に面している。航空機運用の安全確保と騒音対策のため10年5月、滑走路は埋め立て工事によって約1キロ沖合に移設。測定地点の大半で騒音が軽減した。

 「厚木と岩国基地は(立地が)違うから」。岩国市民からよく聞く言葉に、厚木周辺住民のような艦載機騒音への不安はほとんど感じられない。艦載機の騒音の大きさを調べるため、市は岩国基地での試験飛行の実施を国に重ねて求めているが、まだ実現していない。

 「今の岩国で聞こえる音とは全く異なるものが来ると考えた方がいい」。岩国爆音訴訟でも意見陳述した第4次厚木爆音訴訟原告団の金子豊貴男副団長(65)=相模原市=は警告する。

 金子副団長の想定では、厚木基地での艦載機の飛行状況を岩国基地に当てはめた場合、滑走路の両端から南北方向にそれぞれ約10キロまでのエリアが特に被害を受けるという。他の自治体に影響が及ぶ可能性も示唆している。(野田華奈子)

(2015年6月8日朝刊掲載)

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