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米軍の母国から <3> 騒音問題 基地の存続 揺るがす

 「SOUND OF FREEDOM(サウンド・オブ・フリーダム)」という言葉があると聞いて驚いた。直訳すると、「自由の音」。愛国心に満ちた表現で、米国内では軍事基地周辺の航空機の騒音をこう表現する人がいる。

 それでも、騒音は基地の存続を揺るがす問題だ。米東部バージニア州のオシアナ海軍航空基地。同州にある世界最大の海軍基地、ノーフォーク基地を母港とする空母の艦載機が配備されている。

 「騒音の状況は沖縄と同じだ」。地域との調整役を担うオシアナ基地のレイ・フィレンゼ氏は話す。2012年には、離陸直後の戦闘機が住宅地に墜落する事故も起きている。

 05年、連邦政府の基地閉鎖・再編委員会(BRAC)がオシアナ基地の所属機の移転を勧告した。背景には騒音問題だけでなく、基地周辺の開発があった。オシアナ基地で同じく調整役を担当するジョン・ローターバック氏は「基地周辺の住宅開発に対し、海軍は何度も『ふさわしくない』とクレームを出していた」と説明する。

 「所属機が移転することになれば、地元経済に与える打撃は大きい」とフィレンゼ氏。結局、受け入れ先が決まらず移転話は白紙に戻った。地元のバージニアビーチ市はこのまま基地を存続させようと、基地周辺の住宅を買い取ったり、開発を規制したりと対策に乗り出しているという。

 騒音問題をめぐり、独自の取り組みを進める基地もある。米西部カリフォルニア州のコロナド海軍基地では、市民から騒音苦情を受け付ける窓口を設置。苦情が寄せられると、飛行高度などが守られているかをチェックする。場合によっては市民と直接会ってやりとりすることもある。

 コロナド基地のスティーブ・バーネット副司令官は「地元自治体と定期的にミーティングを開き、できるだけ少ない騒音で要求された訓練を実施できるよう努めている」と強調した。(増田咲子)

(2015年6月18日朝刊掲載)

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