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米軍の母国から <5> 安全保障 指針改定 緊密さ増す

 安倍晋三首相の訪米に合わせて日米両政府は4月下旬、防衛協力指針(ガイドライン)を18年ぶりに改定した。日本の安全保障政策は大きく転換し、自衛隊と米軍の運用一体化を進める内容だ。新指針は米国でどう受け止められ、米海兵隊と海上自衛隊が共同使用する岩国基地(岩国市)にどう影響するのか。首都ワシントンのシンクタンクを、首相訪米の余韻が残る5月上旬に訪ねた。

 集団的自衛権の行使容認を反映した新指針。平時から有事まで地球規模の「切れ目のない」自衛隊と米軍の連携を可能にする。米シンクタンク「ヘリテージ財団」の上級研究員で、安全保障問題に詳しいブルース・クリンナー氏は「日本にとっては劇的な変化。自衛隊がグローバルに展開できるようになり、米国も歓迎している」との認識を示した。

 「ただ、日本以外の国から見れば後方支援にすぎず小さな変化だ」とも。海洋進出を強める中国を念頭にした防衛力強化のためには、韓国を含めた協力が不可欠だと指摘した。

 岩国基地には在日米軍再編で昨年夏、KC130空中給油機部隊が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から移転。2017年ごろまでには米海軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機が移る予定で、極東最大級の基地に変貌しようとしている。

 軍事問題に詳しい同財団上級研究員のダコタ・ウッド氏は、岩国基地の機能強化の背景を、戦略的な意味合いよりも「沖縄や厚木の米軍の削減を図るということ。地方の政治に配慮した動きの側面が大きい」と解説する。

 では指針改定によって岩国基地はどう変わるのか。ウッド氏は「ミーティングや訓練、施設利用などによって米軍と自衛隊の緊密さは増すだろう」と指摘する。新指針に実行力をもたらす安全保障関連法案は、違憲論の広がりの中、国会審議が進む。(増田咲子)=おわり

(2015年6月20日朝刊掲載)

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