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軍事機密の焼却指示文書が現存 福山城博物館 45年8月30日付 軍部、戦争責任隠滅狙う

 終戦直後に国が警察を通じて市町村に軍事関係の文書の焼却を命じた文書が、福山市の福山城博物館に現存している。広島県瀬戸村(現福山市)が保管していた1945年8月30日付の公文書。このほか同県有磨(ありま)村(同)が翌46年、連合国軍総司令部(GHQ)の求めに応じて作成した廃棄公文書のリストも残っている。国が軍事機密を含む戦時中の記録を消し去ろうとしたことを裏付ける資料として専門家も注目している。(石川昌義)

 焼却を指示する文書は、戦時中の住民の動員に関連する書類をまとめた冊子にとじ込まれていた。市歴史資料室の嘱託職員山下洋さん(43)が、2013年以降に発行している市史資料編の編さん作業で見つけた。

 松永警察署長が各町村長に宛てた文書で、「各町村役場ニ保管中ノ召集・入営・召募ニ関スル機密書類、其(そ)ノ他重要ト認ムル書類一切(海軍ノモノヲ除ク)ヲ各保管者ニ於(おい)テ焼却」と指示している。

 45年9月5日付の松永警察署長名の文書には、在郷軍人名簿について「誤聞ヨリシテ既ニ焼却セラレタル趣」との記述がある。山下さんは「軍は戦争責任につながる証拠の隠滅を狙ったが、名簿類は戦後の軍人恩給の支給などに必要。軍から警察を通じた焼却指示は口頭の連絡も多く、現場の混乱ぶりがうかがえる」とみる。

 終戦前後に焼却などで処分した公文書のリストを提出するよう求めるGHQの指示については、県府中地方事務所が有磨村に出した46年1月30日付文書(福山市所蔵)に記述がある。

 同2月12日付の有磨村の報告書には、終戦2日後の8月17日に廃棄した文書として44件を記録している。兵役に関する名簿類や防空関連資料のほか、税務、切手の購入記録も含まれ、自治体の判断で広範囲の文書を廃棄した実態が読み取れる。

確認 数例のみ

 国文学研究資料館(東京都立川市)の加藤聖文准教授の話 軍部による公文書の焼却指示は終戦前日の8月14日に決定したとの証言がある一方、指示の経緯や内容を記録した公文書は数例しか確認されていない。「用済み後焼却」とする指示文書も当時は多く、文書の現存は貴重だ。

(2015年8月15日朝刊掲載)

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