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社説・コラム

安保法案参院委可決 国会審議 印象を聞く

 怒号が飛び交う中、安全保障関連法案は17日、参院の平和安全法制特別委員会で可決された。与野党が攻防を繰り広げた国会は前日から緊迫し、与党が採決を押し切った。2日間にわたる国会審議をどう見たか、を聞いた。

根本の議論なし

広島大大学院社会科学研究科 森辺成一教授

 参院での審議に意義がなかったとは思わないが、日本を取り巻く安全保障の現状がどうで、法案によってどのように変わるのか、という根本の議論が結局なかったと感じる。野党は政府の揚げ足を取り、与党も安倍晋三首相の主張をなぞった質問をしているだけ。参院の必要性を国民に示すには、不十分だったと言わざるを得ない。

 特別委採決が迫った最終盤、力ずくで会議を開かせないようにした野党には、国会が言論の場である以上批判があるだろう。1970年代以降は見られなかった姿勢だ。野党は国民の支持があると思い、強硬な態度に出たのでは。このやり方を支持するかどうかは、国民が判断すればいい。

 一方、与党は多数を占めているため、国会審議が始まった段階では、この法案は多少の反発で通ると踏んだのではないか。しかし、国民は国会前を埋め尽くして抗議し、広島など地方でもデモが起こった。

 当初は与野党ともに、国民の関心の高さを読み違えていたと思う。与党は地方公聴会などをもっと開き、野党も早くから地方遊説などで国民の声に積極的に耳を傾けるべきだった。(聞き手は新谷枝里子)

与党、異常な執念

安保関連法案に反対するママの会・広島 弓場則子さん(42)

 「委員会での可決後はどうなるの」「廃案にするためどうすればいいのか」。安保関連法案の国会審議が大詰めを迎えた17日未明、法案の行方が気になって、テレビやネットの情報を見ながら午前3時ごろまでフェイスブックで「ママ友」たちと語り合った。

 その日の午後、参院の特別委で安保関連法案が採決、可決された際の混乱ぶりをテレビで見て、与党の異常な執念を感じた。多くの人が反対の意思を示しているのに、「良識の府」と呼ばれる参院でさえ国民に寄り添っていない。その役割を果たしていない。

 与党にはもっと時間をかけた審議を望むし、野党は牛歩戦術でも何でもいいので、議論を引き延ばして野党の正義を見せてほしい。

 法案や憲法などについて議論する会合を7月から開いている。賛成、反対、中立それぞれの人が意見を出し合った。立場は違っても平和な世界を望む方向性は皆、同じだった。直接対話する大切さを実感した。法案について明確な意見を持っている人は少ないと思う。議論する場を設け、政治への監視を続けていきたい。(聞き手は加茂孝之)

(2015年9月18日朝刊掲載)

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