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安保法案に抗議の輪 岩国などでデモ・集会

 集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法案をめぐる与野党の攻防が最終局面を迎えた18日、岩国市など県内各地で成立に反対するデモや集会が繰り広げられた。与党の県組織は法案の必要性を唱え、早期成立を求めた。野党の県組織は参院特別委員会での採決強行などを批判。安保政策の大転換に反対を訴え続ける姿勢を鮮明にした。

 岩国市山手町の市民会館前広場であった抗議活動には、約70人が集まった。参加者は次々とマイクを握り「日本の最大の武器は憲法9条」「強行採決されても、反対の声はますます大きくなる」などと表明。「戦争法案は許しません」などと記した横断幕を掲げ、市中心部をデモ行進した。

 市内には米海兵隊と海上自衛隊が共同使用する岩国基地がある。同市の小学校教諭西本勢津子さん(56)は「法案の成立で一体化が進めば、基地が狙われる可能性が高まるのではないか」と不安がる。

 柳井市南町の国道188号沿いでは、約30人が抗議活動をした。

 ポスターや横断幕を掲げてドライバーにアピール。長女(2)と3カ月の次女と参加した田布施町の主婦山本裕美さん(35)は「誰も殺したくないし、殺されたくない。子育て中のママたちが全国で声を上げており、抗議を続けたい」と意気込んだ。

 周南市みなみ銀座のJR徳山駅前では、市民団体「NO WAR やまぐち」のメンバーたち約50人が横断幕を手に、「憲法9条一緒に守ろう」などと声を張り上げた。光市の無職林克尚さん(72)は「参院特別委員会での強行採決は国政史上、最悪の暴挙だ」と語気を強めた。

 山口市中央の市民会館前では約200人が集会を開いた。労組の代表者たちが「まだまだ諦めていない」「安倍晋三首相の地元が先頭に立って声を上げなければいけない」と主張。「戦争法を一切実行させない」などとする緊急アピールを採択した。

山口県内 与党は期待 野党反発 安保法案

 「いざというときに反撃できる態勢がつくれる。他国からの脅威に対して抑止力が高まる」。自民党県連の守田宗治幹事長は安全保障関連法案の必要性を説く。今国会での成立にこだわる安倍晋三首相(山口4区)のお膝元。「首相の思いが実現する」と期待した。

 連立を組む公明党県本部の先城憲尚幹事長も「参院特別委員会での審議は約100時間。結論を出すべき時だ」と成立を願った。党支持者に賛否両論があると認めた上で「防衛の穴をふさぎ、戦争を起こさないために必要な措置。じっくり話した人には理解してもらえた」と話す。

 これに対し、民主党県連の西嶋裕作代表は「平和憲法が完全に無になってしまう」と悔しさをにじませた。元最高裁長官や憲法学者から「憲法違反」との批判が相次いだのを念頭に「憲法をないがしろにするのは許し難い。安倍首相は衆院を解散し、国民に信を問うべきだ」と訴えた。

 共産党県委員会の佐藤文明委員長も「憲法違反が明白な法案を、参院特別委で暴力により採決した」と指摘。「こうした反対運動に子連れの母親や高校生が参加するのは経験がない」と受け止め、来夏の参院選へ反対の世論を喚起するとした。

 社民党県連合の佐々木明美代表は「歴代政権の憲法解釈を変更し、数の力で違憲法案を成立させようとするのは独裁者のやり方」と首相を批判した。維新の党県総支部の高邑勉幹事長は「政権によって安保政策が左右されないためにも与野党の幅広い合意が必要だった」と、与党の姿勢を疑問視した。

 村岡嗣政知事は「各種の調査でも法案への国民の理解が十分に得られていない結果が出ている。理解を得る努力を続けることが必要だ」と政府に注文した。(村田拓也、門戸隆彦)

(2015年9月19日朝刊掲載)

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