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福島第1廃炉 広島に拠点 中外テクノス 作業ロボなど開発

 東京電力福島第1原発の廃炉作業に使う遠隔操作ロボットなどの開発拠点を、総合検査サービスの中外テクノス(広島市西区)が同市北西部の「ひろしま西風新都」に設けることが28日、分かった。廃炉技術に特化した施設は中国地方では珍しい。投資額は約15億円で、来月5日に着工し、来年5月の開所を目指す。

 中外テクノスは今月、西広島開発(佐伯区)が整備した産業団地のうち、佐伯区石内北の用地約7200平方メートルを購入した。開発拠点は「電機技術センター」と名付け、建物は延べ約3500平方メートル。原子炉内で作業するロボットや、放射性物質の拡散を防ぐ装置を設計、製作する3階建ての事務所棟と、実験用に原子炉格納容器の一部を実寸大で再現した試験棟で構成する。この施設で、放射線を使った実験などはしない。

 政府の福島第1原発の廃炉に向けた中長期ロードマップ(工程表)では、原子炉から溶け落ちた燃料の取り出しについて、2018年度上半期までに方法を決め、21年から始める予定。それらの作業に中外テクノスも参画する構えだ。新拠点では装置の開発に加え、細かい作業手順の実証試験や作業員の訓練もする。

 中外テクノスは、1980年代後半から国内原発向けに検査や補修の装置の開発、製造を手掛ける。東日本大震災後は、福島第1原発事故の調査に使われるロボットの一部にも携わっている。廃炉関連の業務の増加が見込まれ、既存施設では手狭となるため、専用拠点の設置に踏み切った。岡本直樹取締役は「日本が抱える課題の解決に貢献したい」としている。(堀晋也)

廃炉事業 活発化か 中外テクノス 広島に新拠点 中国地方 多様な技術力

 総合検査サービスの中外テクノス(広島市西区)が「ひろしま西風新都」に開発拠点を新設して本格化させる東京電力福島第1原発の廃炉向けの事業。今後、中国電力の島根原発1号機(松江市)など国内で廃炉作業を進める原発は増える。中国地方でも多様な地場企業が自社の技術や経験を活用し、廃炉事業に参入する可能性がある。(堀晋也)

 中外テクノスはこれまで、国内の原発の維持管理のために検査や補修をする装置を手掛けており、放射線下という特殊環境で遠隔操作で動く装置開発の技術を持つ。こうしたノウハウなどを生かして取り組もうとしているのが、福島第1原発内で作業するロボットなどの開発だ。

 事故を起こした福島第1原発の廃炉作業は、通常の原発よりも、さらに高度な技術が必要になる。大手企業だけではなく、中外テクノスのように特殊技術を持つ中堅以下のメーカーが力を発揮する場は少なくないとみられる。

 福島第1原発の廃炉は事業費も巨額。東電の試算では現時点での廃炉費用は9883億円で、さらに膨らむ可能性に備えもう1兆円の捻出も検討している。通常の廃炉でも1基で数百億円の費用が見込まれる。

 関西電力の美浜原発1、2号機などが廃炉になる福井県は、関電などに工事計画の提出を要請。県原子力安全対策課は「廃炉は大きな事業。地元企業の参入を促す」と説明する。こうした動きは中国地方でも広がりそうだ。

(2015年9月29日朝刊掲載)

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