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連載・特集

毒ガスの島70年 忘れ得ぬ記憶 <2> 組織の行方 高齢化で存続の道険し

 「亡くなった方々に黙とう致します」。年1回の大久野島毒ガス障害者対策連絡協議会の総会が竹原市役所であった。出席したのは構成9団体の代表者たち計17人。毒ガス被害者の冥福を祈る人たちの顔には、深いしわが刻まれていた。

 9団体は元動員学徒の組織や元工員の組織、親睦会など。毒ガス製造に従事していた人に国が交付する健康管理手当などの拡充を求める活動に取り組むほか、隔月で島にある慰霊碑を清掃したり毎秋慰霊式を営んだりする。各団体の日常業務には会員の相談、手当を受け取るため必要な手続き案内もある。

運営が困難に

 ただ各団体とも高齢化で運営は難しくなった。県によると、毒ガス製造に関わった人が受け取る健康管理手帳の所持者はピークの1987年度は4772人いた。2010年度は2753人(平均84歳)14年度は2150人(同87歳)だ。

 構成団体の一つ、大久野島毒ガス障害者幸崎地区協議会の石原和昭会長(88)=三原市=は5月の総会が忘れられない。会員は約60人だが、出席者は15人どまり。役員10人と一般会員5人だった。「高齢で家から出るのがつらい」などが理由という。石原さんは「来年は総会ができんという声が役員からも出る。昨年まで30人は出ていたのに」と考え込む。

 大久野島毒ガス障害者三原地区親睦会。280人近かった会員は約70人に減った。13ある役職を5人が掛け持ちしているという。

解散に危機感

 会長の藤本安馬さん(89)=同=たちは09年から、原則月1回発行する会報に手当受給のために国に提出する書類の種類や書き方などを載せている。高齢化した会員が困らないようにと考えるからだ。「私も含め役員が1人でも亡くなったら解散せざるを得ない」と危機感を抱く。

 連絡協では9団体を統合、事務員を雇用して会員の事務手続きを一括して任せるなどの案も出ているという。もっとも具体論には踏み込めておらず、連絡協の神明正明副会長(84)=同=は「要望活動も団体があればのこと。どうすれば続けていけるのか、早急に考えなければ」と頭を悩ませている。(山下悟史)

毒ガス障害者に対する主な援護策
 厚生労働省の認定を受けると、年1回無料で一般、精密検査が受けられる健康管理手帳や医療費の自己負担分が免除となる医療手帳が交付される。症状などにより健康管理手当(月3万4030円)保健手当(同1万7070円)特別手当(同10万2070円)医療手当(同3万4030~3万6420円)が支給される。

(2015年10月15日朝刊掲載)

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