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日韓共同申請へ来月調印 朝鮮通信使の資料300点余 記憶遺産に 17年登録目指す

 福山市鞆町や呉市下蒲刈町などに寄港した朝鮮通信使の関連資料の世界記憶遺産登録に向け、日本の団体と韓国の団体が2016年1月29日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)への共同申請書の調印式を長崎県対馬市で開く。江戸期の絵図や書など両国の資料300点余を同3月にも申請し17年の登録を目指す。日韓の共同申請は初となる。

 日本側はNPO法人朝鮮通信使縁地連絡協議会(対馬市)。福山市、呉市、下関市、瀬戸内市、山口県上関町など通信使ゆかりの全国18自治体と民間団体などでつくる。韓国の釜山文化財団(釜山市)から12年に打診され準備してきた。

 朝鮮通信使は朝鮮王朝の外交使節。江戸期の1607~1811年には12回、来日した。江戸幕府は豊臣秀吉の朝鮮侵略で断絶した国交を回復。通信使は友好関係を築く要となった。

 福山市鞆町関連は、通信使が定宿とした国史跡、福禅寺対潮楼(たいちょうろう)からの景観を褒めてしたためた書「日東第一形勝」(1711年)など6件14点が候補。市は2015年3月、これらを市重要文化財に指定し、保存と活用の準備を整えた。

 対潮楼では同協議会から送られたのぼり旗を掲げるなどし、機運を盛り上げている。住職山川龍舟さん(66)は「江戸時代に日韓の文化交流が盛んだったことを知ってほしい」。鞆の浦朝鮮通信使研究会の戸田和吉会長(64)も「郷土史家が長年調査してきた成果が実を結ぼうとしている」と期待する。

 日韓両団体の依頼を受けた研究者17人(日本側6人、韓国側11人)が、昨年12月から候補資料選定の会合を10回開いた。参加した岡山大の倉地克直特命教授は「日韓関係が悪化し、共同申請は難しいと感じた時期もあった。しかし、両国の友好に役立てばと研究者の熱意も高まり、ほぼまとまった」と説明する。

 駐広島韓国総領事館(広島市南区)の徐張恩(ソ・ザンウン)総領事は「共同申請は両国の明るい歴史に目を向ける試み。政治的にも関係改善が進む中、多くの人が通信使の精神を共有し、文化交流のきっかけになってほしい」とする。(安部慶彦)

世界記憶遺産
 世界的に貴重な直筆文書、書籍や映画の保護のため、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が1992年創設。2年ごとに国や自治体、非政府組織(NGO)の推薦を受けて審査、登録する。これまでに「アンネの日記」「ゲーテの直筆文学作品」など348件、国内では「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」など5件が登録されている。

(2015年12月30日朝刊掲載)

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