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社説・コラム

『潮流』 岩国総局長・山岡達 空港がつなぐもの

 小学生だった頃、まだ広島市内にあった広島空港を社会見学で訪れた。たぶんプロペラの旅客機だったのだろう。ごう音を響かせて、離陸する姿をおぼろげながらも覚えている。空港は、自分の知らない遠い世界とつながる特別な場所だった。

 岩国市の岩国錦帯橋空港は開港から3年が過ぎた。羽田線の好調な利用もあってか、地元が求めてきた那覇線就航と羽田線増便が実現した。全日空が3月27日からの夏ダイヤで那覇線を1日1往復運航し、羽田線は1往復増えて1日5往復になる。

 滑走路を米海兵隊岩国基地と共用する空港である。1952~64年に定期便が就航していた歴史を持つ。地元経済界が長く「民空の再開」運動に取り組み、県と市は2000年から国に要請を始めた。地元は当初、東京、札幌、那覇の3路線の開設を提案していた。だから当時を知る人たちにすれば、沖縄への便は「ようやく」ともいえる。

 岩国市内で沖縄出身の人と出会う機会は多い。同じ米軍基地のある町だからなのか。仕事で行き来する人もいると聞く。沖縄料理店を営む男性は「沖縄への便があったらいいとずっと思っていた。いろいろな面でつながりがある」と。より新鮮な食材の調達などが期待できるようだ。

 先月の岩国市長選で3選を果たした福田良彦市長は「空港を活用して交流人口を増やし、将来的な定住につなげたい」とし、「全市的な観光振興や企業誘致を目指し、これまで以上にトップセールスに力を入れる」と言う。4日には羽田空港に出向き、利用促進を呼び掛ける。2月下旬には沖縄も訪れる予定だ。

 那覇空港は中国、韓国、台湾の10都市ともつながる。海外から岩国への観光客誘致も見込める、との計算もあろう。ただ、それにふさわしい魅力がどこまであるか。まずは足元を見詰め直すことも必要だ。

(2016年2月2日朝刊掲載)

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