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援護拡大 期待と不満 広島の被爆者 一部に被爆者認定 長崎地裁判決

 長崎原爆の「被爆体験者」の一部に被爆者健康手帳の交付を命じた22日の長崎地裁判決に対し、広島県内の被爆者団体や「黒い雨」訴訟の関係者たちには、国の援護拡大への期待と不満が入り交じった。

 「画期的だが、全員認められればさらに良かった。国は判決を機に、支援施策を一層進めてほしい」。県被団協(坪井直理事長)の箕牧智之副理事長は歓迎し、国に求めた。

 原爆被害の「線引き」をめぐっては、被爆者と国の間でさまざまに争いがある。もう一つの広島県被団協(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長は「一部ではあれ、国の指定地域外で『放射能の影響』を判断したのは一定に評価できる」。国の援護拡大を後押しするような司法の流れに期待する。

 ただ、長崎地裁の判断への不満ものぞいた。広島原爆では、放射性降下物を含む「黒い雨」に遭って健康被害を受けたとして、広島市や広島県安芸太田町などに住む男女計64人が被爆者健康手帳などの交付を求めて広島地裁に提訴している。弁護団の竹森雅泰事務局長は「一歩前進に違いないが、判決は内部被曝をまだ十分評価していると言いがたい」という。

 訴訟を支援している田村和之・広島大名誉教授(行政法)も判決が「年間の放射線被曝線量が自然界の約10倍(25ミリシーベルト)を超える場合は健康被害の可能性がある」と判断した点に、「黒い雨は具体的な線量を示すのが難しく、この基準での線引きは厳しい」と指摘した。(水川恭輔)

(2016年2月23日朝刊掲載)

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