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広島被爆者 がんリスク調査 原医研の大瀧教授ら 土ぼこり吸い 内部被曝 

爆心地東西で差

 広島の被爆者の固形がんによる死亡危険度(リスク)を高めた主因は、放射性微粒子を吸い込んだことによる内部被曝(ひばく)だった、とする研究結果を広島大原爆放射線医科学研究所の大瀧慈教授(統計学)のグループがまとめた。20日、広島市南区であった同大市民公開講座で報告した。(馬場洋太)

 被爆者のがん発症リスクをめぐっては、「ピカ」と表現される爆発時の初期放射線だけを考慮する研究が一般的だ。大瀧教授たちは、「ドン」で表現される放射能を帯びた土ぼこりの飛散による内部被曝の影響を軽視できない、との観点で研究を重ねてきた。

 今回の研究は、爆心地から2キロ以内で被爆した人のうち、浴びた初期放射線量が判明し、1970年1月に広島県内で生存していた1万8181人が対象。2010年12月末までの41年間に固形がんで死亡したかどうかを確認し、被爆地点(距離)との相関を性別や年代別に分析した。

 その結果、多くの年代で爆心地の東側と西側で死亡リスクに差があることが判明。10代男子では爆心地の西側1・2~2キロでの被爆が最も死亡リスクが高くなるなど、距離とリスクの相関が不明確だと分かった。

 大瀧教授は「爆心地から遠いほど弱まる初期放射線の影響では説明できない現象だ」と指摘。「原爆当日の東寄りの風で放射能を帯びた微粒子が西に流れたことや、若い男性が救護や捜索のため郊外から入市し、より多くの微粒子を吸い込んだことがリスクを高めた要因ではないか」とみる。

 内部被曝をもたらした微粒子の正体は、家屋の土壁などに含まれ、原爆によって一時的に放射能を帯びたアルミニウムやマンガンだと推測。特にマンガンは半減期が2・6時間と比較的長く、広範囲に飛散して遠距離被爆者や入市被爆者の内部被曝を招いたと考えられるという。

 3月で定年退職する大瀧教授は「初期線量が圧倒的に高かった広島でさえ、内部被曝の影響が大きいと分かったことは、福島でも放射性微粒子を吸い込むことの影響を軽視すべきでない、との議論にもつながる」と問題提起している。

(2016年2月29日朝刊掲載)

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