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漁船被曝の真相 共に語り継いで 父失った女性 広島で訴え ドキュメンタリー「X年後2」

 太平洋での米国の水爆実験による漁船被曝(ひばく)の真相に迫るドキュメンタリー映画の第2弾「放射線を浴びたX年後2」に登場する高知県室戸市出身の川口美砂さん(59)=東京都=が、映画上映中の横川シネマ(広島市西区)を訪れ、舞台あいさつをした。

 川口さんは小学6年の時、マグロ漁船の乗組員だった父を36歳で失った。当時は「酒の飲み過ぎだ」と周りから言われたが、前作の「X年後」を見て、疑問を感じ始め、室戸市内で元乗組員や遺族らへの聞き取りを重ねていく。映画は、その様子を軸に展開する。

 舞台あいさつでは「水爆実験の被害は(1954年の)第五福竜丸だけだと思っていた。知らなかったのではなく、知らされていなかったのかもしれない。前作を見て、お手伝いしようと思い、元乗組員ら約80人に話を聞いた」と紹介。

 最初は口が堅いが、室戸弁で話すうちに打ち解け、福竜丸事件の衝撃の大きさや当時の体験を話してくれるという。「自分の体を検査したらガーガー反応した。風呂で髪を洗って測ったら反応しなくなった」など、放射能の怖さがあまり知られていなかった状況がうかがえる。

 先月、元漁船員らが事実上の「労災認定」を求めて船員保険の適用を申請した。こうした動きにも触れ、「この映画は、知ることの大事さを問うている。漁船員の被害を一緒に語り継いでほしい。私も聞き取りを続ける」と述べた。

 「X年後2」は、この問題を2004年から取材している南海放送(松山市)のディレクター伊東英朗さんが、前作に続き監督。横川シネマでは21日まで、尾道市のシネマ尾道では26日~4月1日に上映される。(宮崎智三)

(2016年3月14日朝刊掲載)

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