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自宅に平和交流の場 広島の田中稔子さん 国内外の来訪者向け 核廃絶願う輪広げたい

 国内外で被爆証言を続けてきた七宝作家の田中稔子さん(77)が、広島市東区牛田東の自宅を改築して「平和交流スペース」を造った。海外に出向くことが体調面から難しくなり、地元から核兵器廃絶を願う輪を広げるのが目的。8日から無料開放し、ヒロシマを学びに来る人と市民が触れ合える場にする。(山本祐司)

 閑静な住宅街。路地を進むと「Peace 交流スペース」と書いた看板が出迎える。玄関を抜け、白を基調にした約60平方メートルの1階は田中さんの大作が彩る。発達した文明とともに核のごみや戦争も未来に贈る地球、穏やかで雄大な宇宙…。赤、青、黒を用い、平和をテーマに制作した20代からの力作がそろう。

 「アートな空間で一緒に時間を過ごし、優しさを感じ合えば争いは防げるのでは」。そう期待し、国内外から広島に訪れる人に立ち寄ってもらい、市民とお茶を飲んだりおしゃべりしたりして思い出を共有。七宝焼を作ることもできる。要望があれば証言し、核兵器が使われた場合、どんな悲惨な事態を招くか伝える。

 6歳の時に爆心地から約2・3キロの牛田地区で被爆。悲しい記憶と向き合えずにいたが、2007年、世界を巡る船旅に参加したことをきっかけに体験を話し始めた。10カ国以上で証言したが、けがをした左膝の痛みがひどくなり、昨年3月、海外での活動に区切りを付けようと決めた。アトリエなどがある1階をリフォームする構想を練り、4カ月かけて工事した。

 平和交流スペースで乳幼児向けの英語教室を開く東区の米国人エリック・クラウスさん(42)は「部屋の雰囲気がよく、外国人も広島の人とつながることで歴史を身近に感じられる」。田中さんは「気軽に使ってもらい、言葉の壁を乗り越え多くの人と平和を実現させたい」と呼び掛けている。金、土、日、月曜(第1月曜をのぞく)の午前11時~午後3時。田中さんTel082(221)8168。

(2016年4月4日朝刊掲載)

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