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【解説】オバマ大統領広島へ 7年越し約束 果たす時

 オバマ米大統領が7年越しの被爆地との「約束」を果たす時が来る。2009年の大統領就任時から希望していた広島訪問を、5月の伊勢志摩サミットに合わせて実行に移す見通しだ。原爆を投下した核超大国のトップ自らがあの日の惨禍に触れ、「核兵器なき世界」を目指す米国の地歩を固めてもらいたい。

 「将来、訪れるのは光栄で大変意義深い」。09年11月。初来日したオバマ氏は首相官邸での記者会見で、被爆地訪問への意欲を口にした。先立つ4月にはチェコ・プラハで演説し、核兵器を唯一使った国として米国が行動すべきだという「道義的責任」にまで踏み込んだ。若き米大統領の言葉に、広島の被爆者や市民は希望を感じた。

 しかし、その後は裏切られ続けた。米軍の最高司令官として核抑止を肯定し、性能維持と称して核実験を続けた。現実主義者としての側面ばかりが目立った。ロシアとの関係悪化で、二国間の軍縮交渉は停滞したままだ。核兵器の非人道性を直視して法的禁止を求める非保有国に歩み寄る気配はない。

 この7年、オバマ氏が提唱した「核兵器なき世界」は、被爆地から見れば遠のいたと指摘せざるを得ない。

 来年1月で退任するオバマ氏が、これから米国の核政策を大きく転換するのは非現実的だろう。広島訪問が在任中のレガシーづくりとの指摘もある。しかし、単なる個人的なレガシーに終わらせてはならない。

 一瞬に消えた無辜(むこ)の民を追悼し、老いた被爆者の心身の傷を少しでも癒やし、謝罪を求める気持ちにも正面から向き合わねばならない。核兵器をなくすターニングポイントとなる「ヒロシマ演説」を、世界中の市民が聞きたがっている。(岡田浩平)

(2016年4月23日朝刊掲載)

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