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爆心直下の絵の写真  広島の田辺さん、米で入手 8月に描く?

■記者 森田裕美

 被爆から間もない広島で、爆心直下の惨状を描いたとみられる4枚の水彩画を写した写真が、米国立公文書館で見つかった。原爆で破壊された町並みや生活を映像で復元している広島市の会社社長田辺雅章さん(70)が渡米して入手した。

 4枚の絵は「広島スケッチ」「原子爆弾による広島災害図」などと記されている。現在の中区の元安橋やレストハウスなどが描かれ、死体や軍人らしき姿もある。「草土史」と署名があり、裏側に「有名な医療画家のヒトシモタニ(ペンネーム・ソウドシ)による水彩画の複写」「被爆数日後に爆心地付近で描かれた」などと英語で記していた。

 被爆の惨状を描いた初期の画家としては1945年9月に市中心部に入った高増径草(たかます・けいそう)氏(85年、84歳で死去)らが知られるが、説明文が確かならそれ以前の8月中に描かれた可能性がある。

 広島県史原爆資料編には、陸軍軍医学校に所属して「藻谷草土史」の名で活動していた人物による陸軍省医務局派遣の調査団の調査報告書の表紙イラストが掲載されている。

 広島女学院大の宇吹暁教授(日本戦後史)は、この藻谷氏と「モタニ」が同一人物である可能性を指摘。陸軍省の調査団は45年8月8日に広島入りしており、同行していたとすれば、被爆後のかなり早い段階で描かれたとみられる。

 原爆資料館の落葉裕信学芸員は「米軍に接収されたとみられ、米国が絵も貴重な資料とみていたことがうかがえる。初期の被爆状況を伝える貴重な資料」と分析している。

(2008年10月4日朝刊掲載)

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