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原爆症認定 現行基準却下の19人提訴 

 原爆症の認定基準が2008年に緩和された後に申請を却下された東京都と千葉、茨城、静岡3県の被爆者19人(うち2人は遺族が原告)が27日、国の処分取り消しを求め、東京地裁に提訴した。(岡田浩平)

 訴えによると、19人は広島や長崎の爆心地から1・0~4・7キロで直接被爆や入市で被爆。がんや心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、甲状腺機能低下症、慢性肝炎をそれぞれ患い、06年から順次、原爆症の申請をしたが、08年4月以後に却下された。

 国は同月に採用した現行の認定基準で、約3・5キロ以内で被爆したり、原爆投下から100時間以内に2キロ以内に入市したりした場合はがんや心筋梗塞など七つの病気を「積極認定」する方針を示している。

 現行基準下での国の審査をめぐる訴訟では、今月9日に、大阪地裁が心筋梗塞を却下された被爆者2人を原爆症と認め、国は控訴を見送っている。


相次ぐ却下 募る不満 原告

 国による原爆症認定で、2008年4月に大きく緩和された現行基準での認定を求めて東京都などの被爆者たちが27日、一斉訴訟に踏み切った。同様の提訴は広島など8地裁83人(原告側まとめ)に上る。原告は、現行基準で「積極認定」の対象となっている病気が相次ぎ却下される現状への不満を募らせ、早い解決を求めている。

 東京都の寺西勲さんは広島市の爆心地から1・7キロで被爆。06年に心筋梗塞などで原爆症認定を申請後、08年に70歳で亡くなった。「積極認定」の要件にあてはまるが、10年に妻米子さん(71)に届いたのは「却下」の通知。この日、都内での集会で遺影を胸に抱いた米子さんは「夫のために勝訴したい」と決意を語った。

 今回の提訴は東京都原爆被害者団体協議会(東友会)が呼び掛けた。日本被団協が主導し、全国の306人が旧基準での却下取り消しを求めた原爆症認定集団訴訟が11年末に終結したばかり。高齢の被爆者に心身の負担がかかる新たな訴訟に抵抗はあったが、積極認定を見込んだ事例の却下が重なったため、原告の思いを聞き、踏み切らざるを得ないと判断したという。

 広島市の3キロ地点で被爆した茨城県笠間市の武永猛さん(78)も心筋梗塞を却下された。「ぎりぎりまで訴訟するか悩んだ。国が原爆症認定の在り方を根本から早く改めてほしい」と願っていた。(岡田浩平)


国控訴見送り長期化を回避 厚労相が説明

 小宮山洋子厚生労働相は27日、閣議後の記者会見で、被爆者男性2人の心筋梗塞を原爆症と認めた9日の大阪地裁判決の控訴見送りについて、司法判断を尊重し、裁判の長期化を避ける意図があったことを明らかにした。

 厚労相は、国が敗訴を続けた原爆症認定集団訴訟の司法判断と、行政の審査の隔たりを解消する議論を同省の検討会で進めていると強調。「なるべく早く全体のしっかりした対応を取りたい」としつつ、今回の判決に関し「司法が判断したことを引き延ばすのはやめたいと思った」と説明した。

 一方、がん以外の病気の認定を厚労省の審査会が厳しく判断しているという日本被団協の指摘には、「検討会の結果を受け、皆さんが納得いく方向で結論を出したい」と述べるにとどめた。

(2012年3月28日朝刊掲載)

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