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社説・コラム

[被爆者からオバマ氏へ] 「原爆の子」もう御免 早志百合子さん=広島市安佐南区

  ≪段原国民学校(現段原小、広島市南区)3年の時、爆心地から約1・6キロの土手町(現南区)の自宅で被爆。1951年に出版された手記集「原爆の子」に自らの体験談を寄せた。執筆者の親睦団体「原爆の子きょう竹会」の会長を務める≫
 手記は幟町中2年の時、国語の宿題で嫌々書いた。当時は他人が読むのを全く想定してなかった。だから飾らない言葉で、淡々と残酷な体験をつづれたのだと思う。「死人がごろごろしていた」と。ただ、数年前まで自分の手記を読み返せなかった。あの日を思い出すのがつらかった。

 今は世界中で翻訳されている。オバマ米大統領にもぜひ読んでもらいたい。米国では、いまだに原爆投下を正当化する声があると聞く。手記を読めば、そんな気持ちになれないはずだ。

 私も米国が憎い時期があった。原爆が生んだ「地獄」は戦後も続いたから。(米国が設けた)ABCC(原爆傷害調査委員会)の依頼で、高校生まで検査に通った。10代の少女が裸にふんどし姿で写真を撮られたり、血を抜かれたり。まるで実験のモルモットだった。悔しくて、家でわんわん泣いていた。

 ただ、オバマ氏に謝罪を求めようとは思わない。それよりも被爆地を訪れて感じた気持ちを素直に語ってほしい。二度と「原爆の子」を生んではいけない。そんな決意を固めてほしい。オバマ氏の言葉には世界を動かす力がある。私はそう信じている。(和多正憲)

(2016年5月25日朝刊掲載)

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