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厳戒訪問 細心の舞台裏 広島にオバマ氏 被爆者に直前打診 献花台急きょ特注

 オバマ米大統領の広島訪問で、地元は、正式発表から17日という極めて短期間での準備を迫られた。広島市は平和記念公園(中区)の警戒から贈答品選びまで腐心。広島県警は全国の警察が主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に力を割く中、過去最高レベルで警備に当たった。「歴史的な一日」の舞台裏の一端を振り返る。(長久豪佑、門戸隆彦)

 「大統領が無事帰られてよかった」。5月27日の訪問後、市の担当者は胸をなで下ろした。日米両政府は同10日に正式発表。米政府は警備上の観点から、地元当局にすら、ぎりぎりまで行程を明かさなかった。

 当日の流れについて、3日前の時点で市幹部は「(外務省などから)指示がない」と焦りの色を濃くしていた。市が日本被団協の被爆者3人に公園での訪問行事出席を打診したのは、前々日の夜から前日朝にかけてだった。

 細かい配慮もした。例えばオバマ氏が花輪を手向けた献花台。4月の外相会合ではイーゼル型の台が風で倒れるアクシデントがあった。市はより重厚なピラミッド型の台を急きょ特注。オバマ氏が原爆資料館で記帳した芳名録も折り鶴再生紙の特別製を用意した。

 土産品は、デザイナーで被爆者の三宅一生さん=東区出身=の事務所がデザインを手掛けた腕時計と紅葉の柄が入った万年筆。三宅さんは、米紙への寄稿でオバマ氏に広島訪問を呼び掛けたことがある。

 一方、外相会合以上に厳重にしたのが警戒だ。市は立ち入りを禁じた公園一帯を職員で囲むため、外相会合時の3倍の約790人を動員。公園外には市民ら約5千人(県警発表)が詰め掛け、二重三重の人垣ができた。

 県警も限られた情報の中で警備計画作りを強いられた。特に警戒したのは公園の周辺や沿道の雑踏警備だった。幹部は「大統領の車列を狙う不審者が紛れている可能性があり、気が抜けなかった」。

 ある幹部によると、訪問を終えたオバマ氏が大統領専用機で米海兵隊岩国基地(岩国市)を飛び立つと、宮園司史本部長は警備本部に詰めた幹部約90人に謝意を伝え、警備に当たった警察官に無線でねぎらいの言葉を贈った。本部では大きな拍手が起きたという。

(2016年6月3日朝刊掲載)

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