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石橋蓮司「ふろたき大将」再び 来月1日NHK総合

 映画「ふろたき大将」(1954年)の原爆孤児役でデビューした石橋蓮司(74)が、役者の原点となった人物の今を演じた。7月1日午後8時から中国地方のNHK総合テレビで放送されるドラマ「ふろたき大将 故郷に帰る」。石橋は「自分の芸能史、人生を総括させられるようだった」と語る。

 映画は、原爆被害を生々しく描いた「ひろしま」で知られる関川秀雄の監督作。戦後間もない似島(広島市南区)が舞台で、当時13歳の石橋は、放浪の末に原爆孤児を育てる似島学園にたどり着く「徳三」役でデビューした。学園の風呂たき係として成長し、生きる希望を取り戻す姿を好演している。

 今回のドラマは、映画の映像も交え、徳三のその後を描く。独り生きてきた徳三は、ふとしたことでおれおれ詐欺の電話をかけてきた青年と知り合い、六十数年ぶりに似島へ。仲間にばかにされていた自分に自信をくれた先生の言葉を思い出し、勇気を青年にも渡そうとする。

 東京大空襲の焼け跡で育った石橋。デビュー作で訪れた広島で「人類最悪の兵器で焼かれた街、バラックで暮らす人々に心を痛めた」と振り返る。映画には実際の原爆孤児も多く出演した。「その後、どんな役をやっても、愚かな人間の行為に対して訴えたい思いがあった」

 似島ロケでは、台本にナレーションとして書かれていた「先生帰ってきました」との言葉を思わず叫んだという。「あの風景を見るとつい口に出た」。役者人生の原点に立ち返り、熱のこもった演技を見せる。

 広島放送局制作。葉山奨之、池田エライザら共演。(余村泰樹)

(2016年6月11日朝刊掲載)

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