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備後国府跡(広島県府中市) 国史跡に答申 文化審 長崎原爆遺跡も

 国の文化審議会は17日、奈良・平安時代の地方行政府跡である備後国府跡(府中市)や長崎原爆遺跡(長崎市)など12件を、史跡に指定するよう馳浩文部科学相に答申した。

 備後国府跡は、ツジ地区(1万4128平方メートル)と金龍寺東地区(5359平方メートル)からなる。区画溝に囲まれた掘立柱建物群や、池のある庭園の遺構が確認されている。国の行政施設に共通する模様の瓦や役人の装飾具などが出土、色彩の施された陶器も多く出土している。

 8~12世紀の国府成立から衰退までの変遷を示し、古代の地方支配の実態を知る上で重要とされた。最初の調査は1967年度で、82年度からは本格的な調査が続くが、国司が儀式を行った国府の中心施設「国庁」は見つかっていない。未発見での指定は、全国で2例目となる。

 一方、長崎原爆遺跡は1945年8月9日に投下された原爆の爆風で落下した浦上天主堂旧鐘楼や、熱線で焼けた旧城山国民学校校舎、平和公園にある爆心地などで構成。これまで登録記念物としていたが、史跡指定で歴史遺産としての位置付けを強め、保全措置を手厚くする。すでに広島市では原爆ドームが国史跡に、犠牲者を弔う世界平和記念聖堂が国重要文化財に指定されるなどしている。

 ほかに、大山寺旧境内(鳥取県大山町)も史跡指定の答申を受けた。大山の中腹にある山林寺院で中世に最大規模になった。近世以前の建造物や石垣、土塁、参道が残り、国を代表する山林寺院の一つと評価された。

 答申は米子瀑布(ばくふ)群(長野県須坂市)などの名勝指定も求めた。摩尼山(鳥取市)など3件を登録記念物にすることも答申した。秋ごろ答申通り告示され、史跡・名勝・天然記念物は計3194件、登録記念物は97件になる。(筒井晴信)

(2016年6月18日朝刊掲載)

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