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社説・コラム

社説 ’16参院選 第一声と憲法 踏み込んだ議論求める

 アベノミクスの評価や社会保障の在り方…。さまざまな争点が浮上する中、きのう参院選が公示された。国政選挙で初めて18歳選挙権が導入され、若い世代の関心が、どこまで高まるかも注目される。

 その中で忘れてはならないのは憲法改正を巡る問題を選挙戦でどう論じ合うかだ。参院でも改憲に前向きな勢力が3分の2の議席を占めた場合、改正の動きが本格化する可能性があるからだ。過去の衆参の選挙で、ここまで改憲が現実味を帯びて語られるのは初めてだろう。

 しかし、きのうの各党首の第一声を聞く限り、争点としてははっきり見えにくい。改憲阻止を打ち出す野党に対し、与党はできるだけ触れまいとする構図といえよう。

 とりわけ首相である自民党の安倍晋三総裁の発言が注目されたが、やはり経済政策に重点を置いた。「経済を力強く前に進めていくのか、暗く低迷した時代に逆戻りするのかを決める」と専ら主張し、改憲について触れることはなかった。

 連立与党である公明党の山口那津男代表の演説を聞いても、憲法問題の争点化を避けたいスタンスが感じ取れた。

 通常国会での安倍氏の発言との落差は明らかだ。「参院選でも訴えていきたい」「私の在任中に成し遂げたい」と何度も強い意欲を示した。なのに自民党の参院選公約を記した冊子の末尾に示す程度で、本人も積極的に口にしない。いまだ世論が割れる憲法改正に関し、野党側に論戦を挑むのは戦術として得策ではないと考えるのだろう。

 その一方、安倍氏は公示直前に「次の国会から憲法審査会を動かしていきたい」とも述べている。その前に選挙でしっかり国民に問うのが筋ではないか。

 安倍政権はこれまでも選挙の時に前面に掲げず、勝利後には全権委任を得た、とばかりに数の力で押し通してきたテーマが目立つ。特定秘密保護法や安全保障関連法が一例である。今回も同じ手法なのだろうか。

 政権内では、将来の憲法9条改正を念頭に、まず緊急事態条項の創設を進めたいとの声がある。ならば、それを含めて憲法をどう変えたいのか、国民に十分に問題提起をして審判を受ける姿勢がなければ無責任だ。

 野党の姿勢も問われよう。この選挙で4野党が全1人区で統一候補を擁立したのは改憲勢力の議席増への危機感の表れといえる。有権者も各党の明確な考え方を聞いておきたいはずだ。

 きのうの第一声において民進党の岡田克也代表は「ここで参院3分の2議席を許せば、必ず憲法9条を変えてくる」と安倍政権への警戒心をあらわにし、共産党の志位和夫委員長は「憲法を守り、まっとうな政治を取り戻す」とアピールした。

 ただスタンスは微妙に違う。例えば民進党はあくまで安倍政権下の改憲に反対する構えで、将来の改正には含みを残しているのに対し、共産はあくまで現行憲法を維持する立場だ。仮に今後、国会で改憲論が進んだ場合、違いをどう埋めるのか。そのあたりも説明してほしい。

 憲法改正は国のありようを変えることだ。日本が経験したことがない大きな政治テーマである。今回の選挙で与野党が論戦を深めないまま、次のステップに移ることを強く危惧する。

(2016年6月23日朝刊掲載)

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